第5話 集落で逢えたら

花澤さんが見つけていた集落に向かう事にした。



「僕達はやっぱり異質な感じですか」


「そうですね…そもそも話通じませんし…日本人!っていう人がいないので…」


歩幅が狭い彼女が答える。


「そもそも花澤さんは衣食住どうしてるんですか?」


「あ、面倒見の良いおねえさんに拾ってもらってまして何とか…」

「蛮族を八つ裂きにした時に、丁度現場を見ていたんです。怖くて泣いていた私を気にかけてくれた見たいで」

「言葉が通じなくても、何とかして頂いていました」


どの世界にも良い他人はいるものだ。

少しだけ安心した自分がいる。




コミュ障が異性と仕事以外で、

こうも話すのには勇気とお酒が必要である。

異世界でもないと僕は話せないであろう。






互いに、疲れが表情に現れた頃

彼女が告げた。



「もう少しで見えてきます。

このまま集落まで行ってしまいましょう」

 








 

ザクザクと響く砂利を踏む

互いの足音が少しだけ早くなる。

気まずさよりも第三者を求めるムードを

彼女感じてしまうのは被害妄想だろうか。










集落はある程度活気があった。

役場の様な大きさの建物を基準に

数キロに渡って建物がある。


人もそこそこいるようだ。


線香の様なお香の様なものが市場に並び、

それこそ集落の人々も民族的な雰囲気だ。



各地の看板には、

読めない言語で何かしらが書いてある。

ファンタジー慣れをしていた自信はあるが、

こうも言語が分からないと不安になってしまう。






「あ、おねえさん!」


花澤さんに犬耳と尻尾が見えたのは

気のせいだろうか。

軽い人混みを避けながら

タッタと駆け寄り手を振りながらおねえさんに

近づく彼女。



おねえさん とやらは

エスニックな洋服が似合う美人さんだった。

タヌキ顔おっとり系のビジュアルは確かに

おねえさんと言いたくなる。




「池松さん!この方です!」


と、紹介されようにも

言語が分からないと挨拶のしようもない。


軽く会釈をし、花澤さんに目線で助けを求めた。



おねえさんが花澤さんと僕を互いに指を指し、


あら、お仲間見つかったの? 


見たいな声を出し

花澤さんと手を取りキャッキャしている。




言語が分からなくとも、

笑顔で手を取り合う彼女らを見て、

少しだけ僕は切なくなる。


異世界に来ても疎外感を得るとは思わなかった。

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