第3話 カナリアの声

「大丈夫ですか!?大丈夫!?どうしよう…」





女性の声…


貧血から復帰する感覚で目が覚める。

気絶の経験が無いもので少し戸惑う。


うっすら目を開けると

黒髪セミロングの明らかな日本人の女性がいる。



「ぁ…こんにちは…」


寝起きの無様な僕の声で

発声と同時に恥ずかしくなる。




「!!!!…大丈夫ですか!?」

「きゅ、急に上から落ちてきて…死んでいるかと…良かった…」


膝を付き、焦っている女性。





「大丈夫みたいです……」


起き上がりあぐらをかくと同時に、違和感がある。




「無傷…何ですか…?」




女性の言う通り、

少なくともビジネスホテル(ビル)の屋上レベルの高さから落ちているのに、外傷が無い。

手足も動く。少しだけグアングアンとふらつくが、

全く歩くのも支障が無さそうだ。




「何か熊みたいな化け物に襲われて逃げていたんです。ちなみに…ここは長野県のどちらです…?」



「それは…私もわからなくて…」







気まずい沈黙が続いた。




「ぁ、僕、池松明人と申します。27歳です」


「花澤めぐみです。24です」




ぎこちなさ過ぎる会話。そして静寂。






「あの…池松さん。異世界転生って信じます…?」



新手の宗教勧誘だろうか。

一瞬の内に彼女に対して警戒を強めた。

不細工熊さんに話しかけてくれる異性は

やはり、ろくな他人はいないのか。

僕なんかどうせ…

と、同時に


「ふざけてる訳じゃないです!すいません!」


「近くに、集落があって…人が居たんです。ですが…」


言い淀む彼女。





「日本語が通じないんです」





僕も他人と話す時、聞き返される事が多いし、

日本語になっていないとか罵られる事が多い。

彼女も同じ人種かと思ったが、雰囲気的に

意味が違うみたいだ。



「外国人的な顔立ちの他人達で、言葉が全く違くて…言語もスペイン的な感じの様な英語の様な…

それに……信じてもらえるかわからないですが…」










「私…死んでいるんです」

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