第2話 崖
生きていた中で、動物園以外で
熊を見たことが無かった。
檻にいる寝っ転がったそれを
可愛いとよく思ったものだ。
僕の体系も丸い(175cm 95kg)から、
「くまさんみたいでカワイイ」と、
異性から、性的対象外の意として言われたものだ。
「くまさんカワイイ」を信じてはいけない。
異性から発せられるそれは、
僕に向けられた、他人としての
ランク下にカテゴライズされるという意味だ。
実際、間近で熊(の様な化け物)を見ると、
弱者強者で測るなら、後者である。
もっふもふの熊さん(殺意高め)が、
がなり立てて涎をまき散らす。
洞穴(の様な場所)で追い詰められて、震えて声も出ない僕。
目を見ると、真っ赤でイってしまっている。カメラのレンズの様ではないか。
毛の色も真っ黒、爪が異様に長い。
刃渡り15cmぐらいではなかろうか。
牙より爪が発達している。
と、巡らせている内、
熊さんは右腕を振り上げ、
僕を殺しに掛かって来た。
咄嗟に左腕で防御をとる。
鈍い打撃音と僕の叫び声と化け物の雄叫びが響く。
ばちん
と、磁石が反発する様に熊さんと僕は弾け跳んだ。
正確にいえば、熊さんが弾け飛び、
僕は壁に打ち付けられた。
戸惑い、どうした、痛みがない、何だ。
頭で巡らせ、立ち上がり僕はとにかく逃げた。
熊さんは十数体いるらしく、
逃げた獲物を全力で追いかけてくる。
体力は全然回復しておらず、もう駄目だった。
「何と…なんてこった…!」
生命の危機に思わず口走る自分に驚いた。
フィクション作品でよく見る
独り言が多いキャラクターでは無いか。
恐らくこれは防衛反応だろう。
崖・崖・崖 崖っぷち。
都合良く逃げた先は崖。
これはもう死ぬしかない。
もう後が無い。
足が痛い。
助けてくれ助けてくれ助けてくれ誰か助けてくれ
助けてくれ助けてくれ助けてく
運動不足の肉の塊が化け物を撒ける訳はなかった。
再度、猛烈な打撃のような衝撃が背中に響き渡り、
僕は奈落へ落ちてゆく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます