第17話 到着


『っ! 下から来るわよ! 構えてッ!』


 空中からシエルのいる場所を探していたその時、ルナが突然叫んだ。それに従い取り出した剣を構え、下に向かって振る。

 ガッッッッッ!! という音と感触。剣の先に鋭い何かが接触している。


「くっ!」


 迫ってきたものを受け流し、空中を三次元的に使って回避する。敵が巨大な翼をはためかせた。

 その姿を形容するなら巨大な鷲だろうか。蛇のような尻尾や無数の瞳は化け物じみているが大方の特徴は猛禽類のそれと一致する。


「我が奇襲を避けるとは想像以上の実力者よ」


『あら、今ので奇襲のつもり? だとしたら本当にバカなのね。鳥頭ってとこかしら』


「ほう。随分と口が回るなクソトカゲ」

「必要以上にあおってんじゃねぇよ! コイツ。パワーは結構あるぞ!」

『そうね、でもこんなの相手してる場合じゃないわ。出来る事なら生かしてとらえて場所をはかせるわよ!』

「できるものならやってみよ! クルルッ! シャァァァッ!!!」


 翼を広げたネオが真っ直ぐこちらに飛んできた。正面からぶつかればきっとただでは済まない。俺は体を翻すとネオの後ろに回り込んで剣を振り上げた。


『ッ! コイツ尻尾が!』

「このパワーは……!」

「我が尻尾は我の意思に関係なく我を守る。このパワーは……ネオが二人と考えればわかりやすいであろうな! ぬんッ!」


 尻尾に剣をつかまれたまま、体が掌のような足につかまれる。


「ぐ! なんてパワーだ……」


『あれで行くわよッ!』


「この状況でか!?」

『私に考えがある! おとなしく耐えなさい!』

「くっ! 了解した!」


「戯言を! この状況から逃れることなんぞ不可能よ! このまま握りつぶしつつミスト様の元にたたきつけてくれるわッ!」

「ぐぅあ!?」


 体がきしみ、強烈なGがのしかかる。体が空に向かっていき、止まった、引っ張られるような感覚のその後、体が一気に落下する。落ちる場所はどこだ!? 首を何とか動かして下を見れば小さな建物が見えた。


『行くわよッ!』


 その時、ルナが叫んだ。体が黄金の光に包まれる。ゴールドキャノンの時と同じものだ。しかしそれが腕に集まるのではなく、体中を満たしていく。


『陽光!』


 体中からエネルギーが放出された。光の力がネオを射抜いて体が自由になって解き放たれる。落下しながら俺は、眼下の建物の屋根を破壊した。上空で爆音が聞こえる。

 ここがどこかは、あたりを見回して分かった。恐らく昔、スタッフルームのような部屋であったのだろう。所々にその名残が見える。


「……来てくれたようでうれしいよ」


 そして、不気味に光る監視カメラのモニター、その前に、ヤツは腰かけていた。


「ミスト……」

『こいつが……』




 怒りがふつふつわいてくる。こぶしを握り締める俺とは反対に、ミストはシエルを膝にのせて抱えたままにこりと笑った。

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