第49話 王都騎士団
訓練場の活気に気圧され入口で固まっていると、先に入ったケイレブに手招きされる。
「ほら、突っ立ってないで中入ってこい」
こっちこっち、と呼ばれるがまま訓練場にある、野球場のベンチのような場所へ案内された。
「ちょっとここで待っててくれ」
そう言い、訓練中の団員たちの元へケイレブは向かう。
ドラコはベンチの中までは入れないので、俺とロバートはとりあえず端の方へ腰を降ろした。そこから訓練場全体が見渡せる。
広さは学校のグラウンド位で、大体三十人くらいが今打ち合いの訓練をしているみたいだ。
その内の一人、訓練を見守っていた人にケイレブは声を掛け、こちらに戻ってくる。
「今、騎士団長は席を外してるらしい。あとから顔を出すそうだから、ドラコのことはその時に相談しよう。とりあえず副団長連れてき……」
すぱん!
「いてっ!」
「とりあえずってなんだよ、とりあえずって!」
副団長、と呼ばれた人はケイレブの頭を叩き、ツッコミを入れている。
……なんかこれ、昨日も見たな?
このノリ、王都の流行りか?
「君たちのことは時々こっちに顔を出すニコラスやハッサンから聞いてるよ。はじめまして。王都騎士団の副団長を務めているバリーだ。君たちはロバートとハヤテ、でよかったかな?」
手を差し出されたので、慌ててロバートと俺は席を立ち、交互に握手を返す。
「はい、緑珠守護団所属のロバートです」
「同じくハヤテです」
「よろしく。詳しくはまだ聞いてないんだけど適性検査受けるんだって?」
バリー副団長は俺たちの座っていた椅子の横に座り、俺たちにも座るよう促す。
ぺこり、と頭を下げ改めて椅子に座り直した。
「はい、なんかそんな話になりまして……」
「俺たちも、どんなことをするのか詳しい話は聞いてないんです。なぁ?」
と、ロバートを見る。……聞いてないよな?俺が忘れてるわけじゃないよな?
「慌てて準備して
「ケイレブ……お前もう少し説明してやれよ」
呆れ顔でケイレブを見るバリー副団長。
当のケイレブは明後日の方向を見て素知らぬ顔をしている。
「まぁ、適性検査と言っても難しいことをするわけではないんだ。後で団長が来たら案内するが、君たちには黒珠の欠片に魔力が流せるか試して欲しい」
「「黒珠?」」
俺とロバートの声がハモる。
「その時に詳しく説明を受けると思うんだが、
「
ちら、と訓練をしている人たちを見る。
みんな鍛え上げられた身体で、
そう思って聞いてみたものの、バリー副団長の顔は難しい顔をしていた。
「真っ先に試したさ。なんなら最近騎士団に入隊した隊員含めて全員な。でも未だに適性検査をパスしたやつはいない」
「え?!」
「王都のやつらはほとんど試したが、ことごとく流せるやつがいなくてな。で、次から各地の守護団の団員たちに適性検査を受けてもらう予定だったんだ」
あー、確かそんな話はケイレブに聞いた気がする。そのために緑珠守護団の駐屯地にも
……ん?てことは……
「もしかして、この後俺たちが受ける適性検査ってもしかして
「ああ、そうだ。
おお、予期せぬ
俺の
そのまましばらくの間雑談したり、訓練の様子を見たりしていたけど、まだ騎士団長は戻ってこなかった。
「おい、バリー!」
バリー副団長を呼ぶ声がし、ようやく騎士団長が来たかなと顔を上げてみれば、そこに居たのは昨日検問所であったケインさんだった。
「あれ?ハヤテ?こんなところでどうした?」
「ケインさんこそ、なんでここに?」
「俺はバリーに少し用があってな」
そう言ってバリー副団長とケインさんは少し離れたところで話し始めた。
そしてバリー副団長は、ふと考える動作をするとこちらを見る。
「騎士団長、随分時間かかってるな……そうだ!君たちもこのままだと暇だろ?!訓練に混ざっていかないか?」
いいこと思いついた!みたいな顔で俺たちを見るバリー副団長。いや、俺剣とかそこまで使えないんだけど……
隣を見るとロバートは少し乗り気なようで、いそいそと準備運動を始めていた。
これ、俺も参加する流れ?!
「ハヤテもちゃんと準備運動しないと怪我するよ!ほら、早く早く!」
あ、参加する流れですね……
渋々俺もロバートの横でストレッチを始め、ある程度身体がほぐれたところで訓練している人たちの輪の中へ、バリー副団長に連れていかれた。
ベンチを振り返ると、ドラコは大人しくベンチ横でケイレブとケインさんと待っている。
……頭いいなぁ……
ドラコに感心しつつ、俺は騎士団のみんなと向き合った。
「訓練、やめ!」
訓練場にバリー副団長の、声が響きわたる。
掛け声も打ち消すその声に、団員たちは素早く反応し、ピタリと剣の打ち合いをやめると、バリー副団長の元に一斉に集まり整列した。
「この二人は緑珠守護団所属のロバートとハヤテだ。騎士団長が来るまで訓練に混ぜてやってくれ」
「「「ハッ!」」」
綺麗に揃った敬礼をし、その後俺とロバートの元へみんな駆け寄ってくる。
「よお、緑珠守護団所属なんだって?何しに来たんだ?転属か?」
「バッカ、お前。この時期にここに来るなら
「あぁ、
「てことはお前ら闇の魔力扱えるのか?!」
「すげぇじゃねぇか!いいなぁ、黒の大陸行けるんだろ?羨ましいぜ!」
わらわらと取り囲まれ一度に話しかけられたため、俺とロバートはどうしたもんかと固まってしまう。
「お前たち、訓練だって言ってるだろ!雑談ならあとでやれ。おいリアン!」
バリー副団長は俺たちを取り囲んでいた団員たちを蹴散らし、輪から外れてこちらの様子を見ていた少し小柄な団員に声をかける。
「……ハイ?」
「お前、まずハヤテの相手してやれ。ほらハヤテ、これが練習用の剣だ」
バリー副団長に手渡された剣は刃先は潰れているものの鉄製なのは変わりなく、ズシリと重かった。
え、待って……
俺普段短剣だからこんな剣持ったことないんだけど……
持ち方すらわからずオロオロしていると、バリー副団長は声を張り上げた。
「訓練、始め!」
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