第41話 黒い糸
「魔力の放出?そんなことできるのか?」
みんなが思ったであろう疑問を隊長がケイレブにぶつける。
「一応本人に確認しないとだけど、多分大丈夫な気がする。これは後で本人に聞いておきます」
「魔力抜くにも傷つけずに出来るのか?ハヤテの話だと、剣で斬りつけた傷から魔力吸い出してたんだろ?」
「あぁ、傷は付けなくても魔力吸えるそうです。
傷をつけずに魔力だけ吸う……
俺も使えたりしないかな?
俺はじっ、と指先を見て集中する。
あの時の
しゅる……
指先から黒い糸が出た。
え、これそう?この糸みたいなの?
これじゃ魔力吸えなくない?
俺はそっと隣のロバートに声をかける。
「なぁ、ロバート……俺も
「え、何その糸……魔力吸うの無理じゃない?俺の魔力吸ってみる?」
ロバートの手を借り、糸を手に乗せる。
……全然吸えてる感じがしない。
「何も魔力減ってる気がしないんだけど」
「あ、やっぱり?」
俺は
するとロバートも魔力を手に集中し始めたようで、しばらく様子を見ていると、俺と同じように指先からヒョロ、と黒い糸が出た。
無言で手を差し出し、ロバートが先程と同じように俺の手に糸を乗せてみるも、魔力を吸われる気配はない。
ロバートも諦めてすぐに糸を引っ込めた。
そしてお互いに吹き出す。
「やっぱり
「だねー」
コソコソ話していると、隊長に叱られる。
「おらお前ら、遊んでないでアイデア出せ!
『ハイ!』
傷つける訳には行かないからトラバサミ系はダメだろ?
捕獲するにもあの崖を崩す体当たりをしてくる
あ!
「
「あ?
「もし、これなら
「スイミンヤク?」
「あれ?もしかして……睡眠薬ってない?飲むと寝ちゃう、みたいな」
やばい、もしなければ俺はもうお手上げだ……また別の案考えないと。
そう思っていたら隊長が閃いてくれた。
「あぁ、眠り粉みたいなもんか。ただなぁ、
「薬ならヘンリーせんせーに聞いてみたら?」
ロバートがそう言って先生を呼びに行こうと席を立ったので、俺は慌てて止める。
「あ、いいよいいよ!俺呼んでくる!ヘンリー先生調剤室にいるかな?」
「今日は出掛けないはずだからいると思うよ」
「じゃあ、ちょっと行ってくる!」
食堂を後にし、調剤室の扉をノックしてみるものの返事がない。
ドアノブを回してみると鍵はかかっておらず、中へ入れたので入って声をかけてみた。
「ヘンリー先生、いますかー?」
「はーい!こっちだよー」
声は外から聞こえる。
てことは薬草畑にいるのか。
外扉を開けて顔を出すと、ヘンリー先生はやはり畑の中にいた。
「おー、ハヤテくん!どうしたんだい?」
「ちょっとヘンリー先生に薬のことで聞きたいことがあって……」
言い終わらないうちに、ガシッ!と腕を掴まれ調剤室の中へ連れ込まれる。
怖い怖い、ヘンリー先生急にスイッチ入るからマジ怖い!
「なんだい?!なんでも聞いてくれていいよ!あ、ここ座って!!」
用意されたイスへ腰掛け、話を促される。
そのヘンリー先生の右手には紫色のいい匂いのする花が握られていた。
あれ?この匂い……
「えっと、ちょっと
先生の手には、昔テレビで北海道特集をしていた時に画面いっぱいに映し出されていた紫色の花、ラベンダーが握られていた。
「あぁ、これ?
「へぇ、薬草じゃない花も育ててるんですね」
ラベンダーってよくアロマとか、部屋をいい匂いにするのに使われてるやつだよな?
ヘンリー先生、そんなオシャレな感じには見えなかったけど意外だなー。
変なところに感心してると、ヘンリー先生は、いやいや!と手を振る。
「何言ってるの、ハヤテくん!
「え?!」
今、タイムリーな話題が聞こえた気がする。
眠りに効く?!
「ヘンリー先生!もしかしてこのラベンダー、俺が聞きたかった薬に関係してるかも!」
「あ、さっき聞きたかったっていう話?話してみてくれる?」
ヘンリー先生は、テーブルの上にあった花瓶にラベンダーを差すと、俺の向かいのイスへ腰掛けた。
「今、
「
ヘンリー先生はあごに手をかけ、考える仕草をした。
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