第25話 冷却魔法と加熱魔法

「冷却魔法?そりゃあるよ」


事も無げに言い放つロバート。

え、俺それ聞いてないんだけど?


「冷却魔法って何?氷魔法なんかあったっけ?」


確か魔法は、火・土・水・風、あと無属性じゃなかったっけ?氷魔法って無属性に入るのか?


「氷魔法?そんな魔法属性はないよー。冷却魔法は水魔法の一種だよ」

「え、水魔法なの?」

「そうだよ。あと冷却魔法の反対で、加熱魔法もあるけどそれも水魔法」


ん?混乱してきたぞ?


「え、でも加熱魔法って要はお湯だよな?ロバート、お茶沸かす時爆ぜろブラスト使ってなかったか?」

「一般的にお湯を沸かす時とかは水魔法で温度上げてくよりも、一気に爆ぜろブラスト使った方が早いから。あと冷却魔法も加熱魔法も、めちゃくちゃ魔力食うんだよ」

「魔力を食う?」

「そう。魔力量が半端ないライアンとかならまだしも、一般的な魔力量の人は冷却魔法も加熱魔法もあまり使わないね。冷却魔法は普段そんなに使い道ないし、加熱魔法はさっき言ったみたいに爆ぜろブラスト使った方が一瞬で熱湯になるし。魔力量の消費も加熱魔法と爆ぜろブラストじゃ、桁違いなんだよね」

「あぁ、だから……」


俺の魔力がゴッソリ持ってかれたのはそんな理由があったからか……


「そんな感じで、使おうと思えば使えるけど効率悪いから普通は使わない魔法が冷却魔法と加熱魔法。ハヤテがさっき回復薬固めた時には無意識に冷却魔法使ってたんだろうね」

「なるほどなー。でも効率悪いけど持ち歩くのには便利だから、俺、明日持ち歩く用に少し頑張って飴作ろうかな」


休み休みなら三本分くらいなら頑張れそうな気がする……

そう思っていると、ロバートが「それだ!」と手を鳴らした。


「これ、ちょっと無理するけど魔力量の底上げ出来そうだから夕飯食べたあと何本かさっきの状態にしよう!」

「魔力量の底上げ?あ、一旦魔力ギリギリまで回復薬の飴作って、少し回復したらまた作って……ってやればもしかして魔力量増えやすい?」

「うん、多分。回復薬飲みすぎると逆に体調崩すから、回復薬飲まないで自然回復させながらだからそんなに作れないとは思うけど」

「回復薬飲みすぎるとダメなのか?」

「短期間に何度も飲むと、効きづらくなるし魔力酔いも発生するんだ」


副作用出るなら何度も飲むのはやめておこう……

さっき飴にしたやつ食べたばっかだしな……

……あれ?そういえばまだ眠くならないな?


「なぁロバート、回復薬の副作用の眠くなるやつ、あれって慣れないとすぐ出るって言ってたよな?」

「うん、そうそう。なんか効きすぎるみたいで、何回か飲んで身体に回復薬が馴染まないとキツい眠気が来るよ」


だよな、俺昨日すぐ寝落ちしたもんな。

でもまだ二回目くらいなのに全然眠気が来ない。もしかして……


「……飴にすると、副作用出ないかもしれない」

「え、ほんと?」

「俺さっき飴にしたやつ一個食ったんだけど、全然眠気来る気配がない」


回復薬の飴舐めてから、一応眠気に備えてたけどあの、気を失うような感覚はない。

副作用ないとなんか安心して舐められるなー。


「ハヤテくん!」


早足で近寄ってきたヘンリー先生に肩を掴まれる。

どうやらロバートが呼んできたみたいだ。


「回復薬をあの石みたいにすると副作用出ないって本当かい?」

「副作用っていうか、眠気は今のところないです」

「ちょっと調べてみたいんだけど、さっきのまた作ってもらうことは出来る?」


いやー、あとちょっと魔力回復しないとまだ作れなさそうかな。あ、でも……


「俺今、まだ作れるほど魔力回復してないんですけど、さっき隊長が一個作ってましたよ」


俺がさっき会話に割り込んでしまった為、隊長は後ろのテーブルで他のメンバーと雑談していた。みんなに、隊長作のビンに入った飴を見せつつ、作り方を説明しているみたいだ。

ライアンが真似をしようとして、熱し過ぎたのか、ビンを吹っ飛ばした瞬間を見てしまった……

怖っ……

そして、それを何事も無かったかのように片付けているマシュー先輩。慣れてる感じなので多分ライアンは魔法使うといつもあんな感じなんだろうなぁ。

そこにヘンリー先生が突撃していき、さっきの隊長作の飴を譲ってもらっていた。


「ジェイド悪いね。これちょっともらっていくね」

「調べて貰えるならありがたい。ついでにここにあるヤツ全部同じようにしておいてやるよ」


そう言って全員の顔を見渡し、


「っちゅーわけで、夕食後にみんなで魔力の底が尽きるまで回復薬の加工するぞ!」


と宣言するのだった。


夕食はビーフシチューで、昨日肉を焼く時に入れていたハーブも一緒に煮込んだらしい。

ソフィアさん、早速料理に応用してる。凄い!


「いただきまーす!」

口に入れた瞬間、ふわりと広がる、ほろほろに煮込まれた肉とビーフシチューの相性バツグンの旨み……幸せ……

そしてこのビーフシチューは急いで食べるには勿体ないくらい美味しかった……

次に食べる時はもっと味わって食べられますように!


「ごちそうさまでしたー」


みんなおかわりもせず、急いで各種回復薬を準備する。

俺もご飯を食べたおかげか魔力が戻っていたので早速一本目の加工に取り掛かった。


──カラン。


二本目の加工が終わったところで一旦魔力回復するまで休憩をとる。

台所に行って魔力調整の練習がてらお茶でも入れようかと席を立ったら、ちょうどロバートも休憩に入るところだった。

なら、と二人で一緒に台所にみんなの分のお茶を淹れに行く。


「そういえばさぁ……」


俺がなけなしの火の魔力でお湯を沸かしていると、鉢植えの葉っぱをちぎりながらロバートが口を開いた。


「ハヤテ、食べる前にいつもなんか言ってるけどあれ何?」

「食べる前?」

「えーと、『イタダ』……ナントカって」

「あぁ、『いただきます』と『ごちそうさま』?」

「それそれ!食前の祈り?」


あれ、そういえばここの人達ってもしかして言ってないかも……

そうか、こーいう文化の違いもあるのか。


「あれは、食べ物に対して『生命をわけていただき、ありがとうございます』って感謝の気持ちを込めてるんだよ。俺の育ったところでは食べる前に『いただきます』、食べ終わったら『ごちそうさまでした』って言ってたんだ」

「生命を……頂く……?そんな事考えたこと無かった……」


驚きに目を見開くロバート。


「そうだよね、俺たちが普段食べてるものも、元は生命があって、それを俺たちがわけてもらってるんだよな。その考え、凄くいいな。俺も今度からご飯食べる時食べ物に感謝しよう!」


そう言って、パパっとコップにお茶を注ぐと、お盆に乗せてみんなの元へ持っていった。

俺も残りをお盆に乗せて後を追う。


なんか、ロバートにとったら新しい文化なんだろうに、こうして素直にいいものはいいと取り入れていく姿勢は、凄くカッコイイな、と思った。

俺も、この世界ここのいい所、たくさん見つけて自分のものにしていこう。

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