第24話 飴作り

「え、なん……え……?」


何を言っているのか分からない謎の言葉を発するロバート。

俺は、今ので魔力が少なくなってきたのか若干の目眩を感じてきたので、ビンから青い塊を取り出し口に入れる。

うん、元が結構甘かったからブルーハワイ味の飴って感じかな?不味くはない。

てか俺の魔力、ホントしょぼすぎじゃない?

いくら昼間走り回ったり風呂掃除してたからって、これくらいの飴作ったくらいで底を尽きそうになるなんて……

なんかゴッソリ持ってかれた感じがするんだよなぁ……

なんてことを考えながら、コロコロと飴を舐め終わる頃には魔力回復薬としての機能を果たし始めたのか、少しづつ目眩が治まってきた。

あとはこれから来る眠気に耐えるだけか……

いつ来るかなー?と思いながら、ふと周りを見ると……


「え、何?怖っ!!」


食堂にいた全員が俺を見て、口を開けてポカンとしていた。

想像してみ?大の大人たちがみんな魂抜けたような顔で俺の事見てるんだぞ?恐怖しかねぇ……


「ちょっとみんな……ロバート!どうしたんだよ!」


とりあえず一番近くにいたロバートを揺すってみる。

は!と、目の焦点が戻り正気になったみたいだ。いやまじ怖かったからな?!


「みんなどうしたんだよ、起きてるか?」

「いやどうしたって言うか!ハヤテ!」


突然名指しで呼ばれてビビる俺。


「え、何……」

「『え、何……』はこっちのセリフだよ!今何やったの?!」

「今?もしかしたら回復薬の水分飛ばせば、なんかちっちゃくなって飴みたいになるかなーと思って水分飛ばしてみたんだけど……」


いやー、上手くいってよかった!日本むこうだったら砂糖とか入れないと飴にはならないんだろうけど、回復薬元々甘かったし、イメージ重視のこの世界ここなら出来そうな気がしたんだよねー。

ただ普通は溶かしたあと冷やすよな?

なんで固まったかは謎だけどイメージが出来てたからか?

まぁとりあえず飴にはなったから、こうすれば場所も取らなくなるし、舐めながら移動すれば少しづつ回復するだろうし。

問題は副作用の眠気なんだけどそれは液体のでもあるしな。


「何がどうなったのか、俺達にはさっぱり分からないんだけど……どうやったのかもう一度イチから説明してもらっていいか?」


隊長に詰め寄られ、ライアンからはもう一本魔力回復薬を渡される。

えぇ……これなんかめちゃくちゃ魔力持ってかれるんだけど……

ただ、周りのみんなの期待の目からは逃れられず、仕方なく回復薬を両手で包む。


「俺がやったのは、この回復薬から水分だけを火の魔力で飛ばして回復薬自体の体積を小さくしたって感じ。まずは火の魔力で少しづつ水分を飛ばしていって……」


身体に火の魔力を巡らし、回復薬の水分が蒸発していくイメージをする。ここは特に魔力が減るとかは感じない。


「で、最後に、飴みたいに固まるイメージを送り込むと……」


頭にドロップ状の飴の形を思い浮かべ、魔力を流す。ここが何故かものすごく魔力が減る感じがする。


──カラン。


ビンの中にまた、青い飴が出来上がった。

うぅ……また少し目眩がしてきた気がする……さっき魔力回復薬の飴舐めたばっかなのに……


「火の魔力で水分を飛ばす?こうか?」


隊長が懐から自分のと思われる回復薬を出し、ビンを手で包んだ。しばらくして手の中のビンの様子を見てみると、ドロっとした回復薬になっていた。

……あれ?固まってない?


「なんか量は減ったけど固まらねぇぞ?」

「え、なんでだろう?イメージかな?もっと飴みたいに固まる感じで……」


俺がそのドロっとした回復薬を見ていると、隊長がビンを指差した。


「『アメ』ってあの料理に使う甘いドロっとしたやつだろ?ならそんな感じじゃねぇか?それとは別なのか?」

「え、ドロっとしてる?!」

「そうだよ、見てみるか?」


そう言って隊長は台所から何かビンを持ってきた。中をのぞき込むと水飴のようなものが入っている。……もしかして、この世界ここの砂糖か、これ!


「甘い味付けにしたい時とかコレ入れるんだよ。ハヤテの住んでたとことは違うのか」

「俺のとこはもっと砂みたいな感じだったんですよねー」

「へぇ。住むところが変わると色々違うもんなんだなぁ。んで?ハヤテの言うアメってのはこれじゃないんだな?」

「えーと、この甘いヤツを固めた、手軽に甘いものを食べられるおやつみたいな感じ?」


俺は目線の高さにビンを掲げ、カラカラと振ってみる。


「その飴の作り方を参考にやってみたんですけど……でも砂糖で作る時は鍋で溶かしたあと冷やして固めてたけど、俺が作った回復薬が冷やしてないのに固まるのはなんでか俺にはわからないです」


昔理科の実験で作ったべっこう飴は、溶かした砂糖を冷蔵庫で固めてたけど、回復薬は冷やしてないのに何故固まるのか俺には説明できない。

氷の魔法があるとは聞いてないから、そんな魔法でもなさそうだし……


「あー、冷やすのか!」


なるほど、と言って、俺の持っていたドロっとした回復薬を持っていくと隊長が少しビンを手で包み、その手の中で回復薬がカラン、と音を立てた。


「え?!」

「あー、こりゃ魔力食う作り方だなー」


ひと仕事してやったぜ!と言わんばかりにスッキリとした顔の隊長とは対照的に、俺の疑問は膨らんでいく。


「え、冷やす魔法あるの?!」

「回復薬沢山持ってきた!」


俺の疑問の回答を聞く前に、いつの間にか部屋から出て言っていたロバートが、ヘンリー先生を連れて戻ってきた。


「ハヤテくん!また面白いことやってるんだって?!」

「あるだけ回復薬持ってきたから、ハヤテこれ全部固めてー!」


ガシャン、とテーブルに置かれた回復薬は赤青緑入り交じっておよそ百本近く。

いやいやいや!一本でもキツいのにこれはムリ!

俺がムリ!という前に、隊長がロバートを止めていた。


「いやー、この量ハヤテじゃムリだ。俺でもせいぜい十本だな」

「え、なんでっすか?!」

「作る工程で、冷却魔法使うんだよ」

「あぁ、なるほど……」

「ストップストップー!ロバート、冷却魔法って何?!冷やす魔法あるの?!」


おいてけぼりに会話が進むのをぶった切って、俺はロバートに詰め寄るのだった。

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