第22話 お風呂掃除大作戦②
「うわ、すげーなー!風で草切れるのか!」
「え、どうやったらそんな魔法出るんだ?」
マシュー先輩とライアンが、あーでもないこーでもないと言いながら風魔法を出しているみたいだけど、さっきから出てるのはつむじ風だけだ。
へぇ。二人とも魔力、俺よりもあるのになかなか出来ないもんなんだな。
イメージって相当重要みたいだ。
ありがとう、昔遊んだゲーム達……
「あ、出来た!」
ただやっぱり優秀な人達は数分でコツを掴んだみたいで、マシュー先輩はシュパッと風を出してはその辺の雑草を刈り取っていく。
ライアンは魔力量が多すぎて細かい調整が出来ないって言われてたからまだ時間がかかってるみたいだけど。
あれ?その時何か重要なことをマシュー先輩言ってたような……?
「あ!俺も出来そう!」
さっきまでつむじ風を起こしていたライアンの周りに、両手を広げたくらいの風の塊が見える。
──
マシュー先輩の忠告を思い出したと同時に、その風の塊は放たれた。
バキバキっ!
裏に生えていた林の木を何本か切り倒し、小さめの竜巻のようになって、ライアンの放った魔法は消えていった。
「あちゃー、やっぱ調整難しいな?」
やっちまったー、という顔をしながら、大して悪びれもなくライアンが言う。
いやいや、めちゃくちゃ木がなぎ倒されましたけど?!
「ライアン、お前この魔法禁止!危なくて近寄れねぇよー」
「やるなら森の方行ってやって!」
マシュー先輩とロバートにも怒られ、「わかったよ……」と渋々頷いていた。
聞いていた通り魔力量凄いんだな……確かに調整出来ないと周りが危ないな、こりゃ。
残りの雑草たちはマシュー先輩がすぐに刈り取ってくれて、あっという間に雑草はなくなった。
残ったのは地面に散らばった刈られた草たち。
「よし、じゃあホウキ取ってくるからみんなで草ひとかたまりにしちまおうぜ」
「あ、待って!草ってひとかたまりにまとめればいい?」
ホウキを取りに行くマシュー先輩を止めて、確認する。
「多分。草まとめて置いとくと、ヘンリーが畑の肥料にするって言って持っていくから」
「じゃぁ……」
と、俺は
筒の中から風が吹き出すイメージで魔力を流すと……
「即席ブロワー!」
上手く飛ばしながら、草をライアンがなぎ倒した木の根元辺りへ集めた。
思った通り、便利!
魔力が強すぎると、多分草まみれになって大惨事だと思うけど、俺の魔力そんなに無さそうだからある意味ラッキーだったな!
「うわ、また変な使い方してる」
「え、俺もやってみてぇ!」
ライアンが性懲りも無くまた身を乗り出している。
まてよ、生活の中で水使うことはよくあるよな?てことはこっちならライアンでもできるかな?
俺が次にやろうと思っていたことを、ライアンにお願いしてみる。
「そしたらさ、ライアンちょっとこれ持って」
渡したのは
「端と端を両手で持ってもらって、利き手を前に出して」
右手を前に、左手を後ろに構えるライアン。
「で、後ろに持った手の辺りから
やはり生活魔法は多少調整ができるらしく、
よかった、ちょっと
俺の心配を他所に、ライアンは「おお!なんだこれー!」とはしゃいでいる。
「ハヤテ、これどうすりゃいいんだ?」
「あ、そしたらその水で湯船の泥洗い流して欲しい!前に出してる方の
「やべー、なんだこれ」と、未だにナンダコレを連発しながら湯船の掃除を始めたライアン。
そのライアンを見つめて、こちらを振り返るマシュー先輩とロバート。
はい、これですね、これが欲しいんですね。
はい、と二人にも切った
「やった!オレこっちからやるぜー!」
「じゃあ俺ここやる!」
三人がかりで湯船は綺麗にされ、とりあえずお湯を張っても大丈夫なくらいピカピカになった。
やっぱ人数いると早いなー!よく考えたら俺ほとんど何もしてないけど。
先輩たちを手足のように使い、掃除をさせてる俺。うん、なんか偉そう……
「ハヤテ、とりあえずもう泥はなさそうだよー!この後どうする?」
裏口と湯船の間にあった石畳までピカピカにし終わったロバートが、次の目標を探していた。
「そしたら、湯船にお湯張りたいんだけどどうしたら温泉出る?」
「あ、もうお湯出す?それなら、一時的に魔石でお湯の排出止めてるだけだから、また出るよう魔石に魔力流してくるよ」
そう言ってロバートは湯船の後ろの、木と草で隠れていた俺の身長より高い高さに組まれた石へ向かう。そこにはめ込まれていた魔石に魔力を流した。
すると、
ジャババババ……!
と石からお湯が湧き出し、石と湯船の間の滑り台みたいなところを通って湯船に注がれ始めた。
すごい……まさに露天風呂……!
そっ、とお湯を触ってみると少し熱いくらいでそのまま入っても大丈夫そうだった。
これ期待できそう!
「ロバート、俺今日ここで風呂入ってく!ちょっと着替え取りに家に行ってもいいかな?」
「あ、じゃあ俺もそうしよう。まだお湯溜まってないし、戻る頃にはちょうどいいんじゃない?」
「二人がそうするならオレも!」
「俺は元々中の湯浴み室使う予定だったから着替えはあるんだ。だからここにタライとか用意しといてやるよ」
各々一度解散し、ロバートの家に戻る。
ちょっと寝巻きを着るには時間が早すぎるなと思った俺は、ここに来た時の服が乾いていたのでそれを持っていくことにした。
詰所へまたロバートと連れ立って戻ると、ライアンとマシュー先輩は既に準備万端で、二人とも脱ぎ始めている。
俺とロバートも続いて服を脱いでいく……が。
……いやー、やっぱ脱衣所は欲しいな……
脱いだ服はこの後洗うからいいとして、着替えを石畳とはいえ直置きはちょっと、と俺の中の潔癖さんが言っている。
とりあえず体洗う時のタライは一人一個あるみたいなので、そのうちの一つに俺は着替えを入れた。
三人とも、タライに湯船のお湯を移し各々体を洗っている。俺のタライは着替えを入れているので手元にはない、が!
ここでもうひとつの実験!
今日池から持ち帰ってきた
その切った茎の先を、温泉が湧き出している組まれた石の俺の頭くらいの位置の隙間に突っ込んでみた。
しばらくすると葉っぱの先からちょろちょろ水が出始め、最終的にシャワーのようになった。
よっしゃ!思った通り!
体を洗ってたはずの三人が呆れ顔でこっちを見てるけど気にしない。
「ハヤテさぁー、もう何やっても驚かないけどさー」
「ほら、やっぱすぐ面白いことするから目が離せねぇんだよ!」
「ハヤテは魔法の使い方以外にも、変なことしてんだなぁー」
三人が何か言ってるけど、それも気にしない。
俺はそのまま湯船へ浸かり……
「んあーーーーー」
お湯に浸かると何故か出るオッサンの声を響かせつつ、至福の温泉タイムを堪能するのだった。
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