第21話 お風呂掃除大作戦①
ヘンリー先生が採集に夢中になっている間に俺も自分用の
しばらくすると満足が行く採集ができたのかヘンリー先生が戻ってきた。
「お待たせ。とりあえずマジックボックスいっぱいまで採集出来たから今日は帰ろうか」
池から詰所まで、特に問題もなく帰ってきた。
詰所に着くなり、ヘンリー先生は、
「早速この子達を植え替えるぞー!!」
と、謎な気合い十分に裏の畑へ駆け込んで行ってしまった。
元気だなぁ……
俺はこの、池で汚れた身体をどうにかしたいけど……
……そう、びしょ濡れだった服の水は風魔法使ってどうにか乾かしたんだけど、結局何か身体がスッキリしない。
俺が潔癖なだけかなぁ?
あー!風呂入ってサッパリしたいー!
……風呂?あ、そういえば詰所の湯船?ってどんなのか見せてもらおうと思ってたんだった。
「なぁ、ロバート。昨日言ってた詰所の風呂……湯浴み室?ってどこにあるんだ?」
「あぁ、ハヤテ気にしてたよね。見に行ってみる?こっちだよ」
ヘンリー先生の調剤室とは逆の方向に出る裏口の扉へ向かうロバート。
あとをついて外へ出てみると、そこは……
──雑草が生い茂る、荒れ果てた広い庭だった。
「え、ほんとにここ?」
「そうだよー。よく見るとあそこに組まれた石があるでしょ?あの辺が湯船」
「塀とか衝立とか何も無くてすぐそこ林なんですけど?丸見えじゃない?」
「
それは使いたかったら自分でどうにかしろって事だよなー。いやー、湯船入れるなら入りたかったけど、これを一人で掃除するほどの気合いはちょっと……
「綺麗にしたら見た目は露天風呂の温泉みたいで気持ちよさそうなんだけどなー……もったいねー」
「オンセン?」
「んー、なんか地面から湧く熱いお湯?みたいなやつ」
温泉、説明むずいな?
でも地面から湧くお湯だよなぁ。
身体にいい成分入ってるかどうかで温度関係ないんだっけ?
俺が温泉とは、ということを改めて考えているとロバートが、ぽん、と手を打った。
「あぁ、お湯!そうそう、ここの湯船って直にお湯が出るんだった」
は?!
「え、お湯出るの?!直接?!」
「
マジの温泉じゃん!
それ、入らなきゃじゃん!
「火山帯地域と言われればそうかも。俺の故郷も温泉色んなとこにあったんだ!俺、めっちゃ入りたいからここの掃除頑張るわ」
「でも今からだと二人でやっても今日は間に合わないね」
え、手伝ってくれるの……?
「あ、そうだ。さっきマシュー居たから手伝わせよう!」
「それは悪くない?!」
「ほら、さっきの風の魔法、マシューに教えつつ草刈りしてもらおうよ!俺呼んでくるから待ってて!」
そう言って裏口から中へ戻るロバート。
ちょっと遠い目をしつつ、俺も掃除の準備するか。
本当は違うことに使おうと思ってたんだけど、
あとでロバートの家に持ち帰ろうと思って、一旦詰所の玄関に置きっぱなしなんだよな。
建物沿いにぐるっと回ってみれば、思った通り外の正面玄関に出た。
外から見えるのは困るから、やっぱ衝立どうにかしないと……
「ライアン、おかえりなさい」
「おう、ハヤテ!ただいま!何やってんだ?こんなとこで」
俺は裏の風呂掃除をして温泉を堪能したい旨をライアンに伝える。
「あそこ掃除するのか。確かに誰も使ってるの見たことないんだよな。どんなのか気になるから、俺も掃除手伝ってやるよ」
「え、今戻ってきたばかりで疲れてないですか?」
「これくらいで疲れたって言うと隊長に怒られちまう。ちょうど戻ったら湯浴みしようと思ってたし、使えそうならそのまま使わしてもらうしな」
新たな助っ人をゲットし、裏へ戻るとロバートとマシュー先輩もちょうど来たところだった。
「あれ、ライアンおかえり。ライアンも掃除手伝ってくれるの?」
「おう、ついでに掃除終わったらここで湯浴みしてくわ」
ライアンとロバートが話してると、マシュー先輩が俺の方に駆け寄ってくる。
「なぁロバートから聞いたんだけど、また新しい魔法思いついたんだって?!どんなのか早く見せてくれよ!」
「え、新しい魔法?!」
マシュー先輩に詰め寄られ、さらにライアンにも羽交い締めにされ身動きが取れないでいると後ろの方でロバートが爆笑していた。
……助けろよ……
どうにか二人から逃げ出し、まずは雑草掃除を始めることにする。
「えっと、新しい魔法って言うか、風魔法で草刈ります。風を刃に見立てて……」
イメージで魔法が使えることは実証済なので、あの厨二呪文は割愛する。
手のひらを前に突き出し、風の魔力を手のひらへと集中させる。
口には出さない。出さないけど思わず口に出しそうになるのを堪えて心の中で呟く。
──
シュバッシュバッ!
俺の魔力がそろそろ限界なのか、あまり遠くまで刃は飛ばず、その辺の草を刈り取ると、つむじ風になって刃は消えた。
「おおー!」
マシュー先輩とライアンが拍手しテンション上がる中、しょぼんと見えない耳が垂れるロバート。
「あの呪文は……?」
「言いません!」
黒歴史を上塗りさせるんじゃない!
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