第14話 一日の始まりは朝ごはんから
──ピピピ……
目覚ましのアラームが聞こえる……
まだ……もうちょっと……寝……
「ハヤテ!朝だよー!!」
ジャッ、とカーテンが開けられ、優しい朝の光が部屋に差し込む。
……あれ?
ぼんやりと目を開け、差し込んだ朝日に照らされたロバートを見て、だんだんと意識が覚醒してきた。
そっか、ここ、家じゃないんだった……さっきのはアラームじゃなくて鳥かぁ……
上半身を起こし、まだ少しぼーっとしていると、
「はい、着替えて顔洗ったらご飯食べに行くよー!起きて起きてー」
ぺいっ、と布団を剥がされてしまった。
うぅ、起きるよー……朝弱いんだよー……
半分眠ったままでいると、ロバートに、はい着替え!はい洗顔!とどんどん促され準備を済ませる。
そして朝食のため詰所へ向かった。
……もちろん、洗顔の水もロバートに出してもらったのは言うまでもない。
……魔石、今日は必ずもらってくるの忘れない!
「そういや服のサイズどう?」
「あ、大丈夫そう!」
嘘だ。本当は少し裾が余っている。けど悔しいから黙っておこ。
「俺の着てた服ってどう洗濯すればいい?」
「俺はいつも湯浴みの時に余ったタライのお湯で洗濯しちゃうんだけど、ハヤテも今日からそうする?水の魔石あれば多分大丈夫だと思うんだけど。で、部屋に干して乾かしてる。もし乾かすとこまでやりたいなら詰所のなら火の魔石組み込んであるからそこ使うか、かな」
詰所は全自動洗濯機……やっぱハイテクだ……
まあ部屋に干しといて乾くなら俺も風呂の時洗濯でいいかなー。
「あれ?」
ヘンリー先生の薬草畑の横を通りかかった時、畑の中からひょっこり顔を出すヘンリー先生がこちらに気づいた。
「おはよう、早いね」
「ヘンリーせんせーおはよー」
「ヘンリー先生も朝から畑の世話ですか?お疲れ様です」
声をかけると感極まった表情でこちらに駆け寄るヘンリー先生。
怖い怖い!あと手に握り締めてるその鎌、危ないからしまって!!
ビビり散らかしていると
「労ってくれるのはハヤテ君だけだよ!やっぱり僕のところに弟子……」
「ハヤテは俺の弟子だからダメー」
昨日言ったことを有言実行するロバート。
そうです、俺はロバートの弟子なので薬師にはなりません。
「残念ー。そうだ、この時間から朝食ってことは今日森に行ったりするのかい?もし行くなら僕も一緒に行っても大丈夫かな?」
「一緒に?まあ今日は森の手前くらいまでのつもりだからヘンリーせんせー一緒でも大丈夫かな?」
「よかった、昨日も行ったんだけどひとりだったから手前とはいえ、ゆっくり薬草採取出来なくて。あとで詰所に顔出すよ」
そう言って畑仕事に戻っていった。
「ひとりだとゆっくり出来ないって、魔物が出るから、とか?」
「そう、前までは森の手前はほとんど魔物出なくて、ヘンリーせんせーひとりで薬草採りに行ったりしてたんだ。けど最近魔物の動きが不規則になってきててさ」
魔物……そういやまだ姿は見たことないな……昨日肉は食べたけど。
今日会っちゃったりするのかな?
もし遭遇したらどうしよう……
「あら、二人ともおはよう」
詰所に着くと、食堂では既にジェシカが朝食をとっていた。
「おはよー」
「おはよー。今日の巡回はジェシカか」
「そーよー。もうすぐ隊長と行ってくるわ。なんか最近森の様子おかしいんですって?」
食べ終わった皿を持ち、片付けるからあたしも行くわ、と俺たちと一緒に台所へ向かう。
「今日一日調査して、場合に寄っては巡回ルート変えるかもって言ってたわよ」
「あ、隊長昨日そんなこと言ってた。何事もなければいいんだけどねー」
「何事もないこと祈ってて。あなたたちも今日森に行くんでしょ?ロバート、ハヤテまだ森に慣れてないんだから、いつも一人で行く時みたいに奥に行っちゃダメよ?」
「わかってるってー」
じゃ、行ってくるわね。と流れるような動作で洗い物の片付けを終わらせたジェシカは、俺たちを残し足取り軽く台所を去っていった。
「よし、俺たちもご飯食べて出かけよう!ハヤテ、棚から卵と干し肉取ってー」
「おっけー」
言われた通り棚から卵と干し肉を探す。見つけた卵は普段食べていた鶏のものと比べて一回りほど大きい卵で、干し肉の方は、見た目ベーコンだった。
フライパン片手にスタンバイしていたロバートに渡すと手早く焼き上げる。
俺はその間に棚から皿を出すとロバートに差し出した。
「出来上がりー!」
「うまそー!」
カリッと焼かれたベーコンと、黄身がトロッと飛び出しそうな目玉焼きのコンビ……最高……
「ハヤテ、パン持ってきてー!」
昨日教わったパン置き場を覗き込むと、パンを数個取り出し、ロバートの元へ向かう。
このパン少し硬いんだよなー、少しあっためたら多少食いやすくなったりしないかなー。
ちょっとだけロバートに電子レンジやってもらおっと。
席につき、早速パンにかじりついたロバートに、少しだけあっためてもらえるようお願いする。
「わざわざ温めるの?また変なことするよね。みんなそのまま食べるのが普通なのに」
温めることが面倒、というより純粋に温めることが疑問に思ったようで、頭にハテナを浮かべながら、いいよ、と承諾してくれた。
いや、俺基本的に家族と比べて遅い時間に飯のことが多かったから、電子レンジであっためてから食べるのがデフォルトというかあっためないと落ち着かないというか……
ほわ、とパンに湯気が立ったところで、
「ロバートサンキュー!いただきまーす!」
お礼を言って、一つ目のパンを齧る。
おお!?あんなに硬かったパンがめっちゃふわふわになってる!うまー!!
やっぱパンはあったかいのが正解だよー。
うんうん、とひとり納得しながら1個目のパンをそのままで食べ切ったのち、2個目のパンへ手を伸ばし手で二つに割る。間にベーコンと目玉焼きを挟み、お口へダイブ。
やっっっばい、ベーコンエッグサンドまじ美味い。欲を言えば醤油派なんだけど、塩胡椒というシンプルさとパンの相性が最高……!
至福の気持ちで夢中になってパンを頬張る俺の視界の端に映ったのは、こっそりと自分のパンを温めそれを口にし目を見開いているロバートの姿だった。美味いよな、あったかいパン。
「ごちそうさまー!うまかったー!」
「またサラッと常識ひっくり返すことしてくれるよね、ハヤテ……あのパンはヤバい」
ロバートは温めたパンが相当気に入ったみたいで、あの後何個か食べていた。何個食べたかは途中から数えるのをやめた。……胃袋どうなってんだ?
「うますぎて食べ過ぎたー!身体動かしたーい!」
「いや、まじで何個食べたんだよ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます