第13話 風呂は命の洗濯なのに……

尻ホタル事件で心に傷を負った俺が不貞腐れていると、その様子を遠巻きに見てたライアンも爆笑していた。


「お前らホント仲いーのな!ハヤテも早速馴染んでていいじゃねーか」

「馴染んでると言うか、揶揄からかわれてません?これ……」

「揶揄うほどお前のこと気に入ってるって事だよ」


まぁ色々面倒は見てもらってるしな……


「ハヤテごめんて。機嫌直して?そうだ!明日は森に行って色々教えてあげるよ。どう?」


外に遊びに連れていく作戦でご機嫌を取ろうとするロバート。そんな手に……


「……行く」


乗っかってみた。いやだって森とか気になるし。うん。


「はい決定!そしたら、ここさっさと片付けて明日に備えて今日は早く寝よう!色々あって疲れてるでしょ?」


色々あったと言うかありすぎて疲れとかよくわからないと言うか……でもヘンリー先生もたくさん寝ろって言ってたし早く寝ておくか!

よし、と食べ終わった皿を持ち、先に席を立ったロバートに続く。

台所のシンクっぽい窪みの下の引き出しを開けるとその中に皿を入れるよう言われ、その通りに縦に入れていく。そしてそのまま閉めた。

え、まだそれ洗ってないけどしまっちゃうの!?

びっくりして黙ってみていると取っ手近くに魔石が嵌まっており、そこにロバートが魔力を注いでいく。


「……ちなみに……それ、どんな原理か聞いても……?」


なんとなく自動食洗機に見えたので念のため確認してみる。


「これ?皿入れて、水の魔石と火の魔石で勢いよく熱湯出して汚れ落とした後、風の魔石で乾かすやつだけど?」


思った以上に高性能な食洗機だった!やっぱ魔法は便利だよな。

感慨深く食洗機を眺めていると、


「これも初めて見る?ハヤテ今までどうしてたの?」

「いや、俺んちは手で洗ってたから」

「ハヤテってほんとあまり魔法使わないで生きてきてたんだ……大変だったんだね……」


憐れみの目で見られてしまった。いや、科学という素晴らしい文明の利器にどっぷり浸かって楽チン三昧でしたけど!?とは言えないけど……

乾いた皿を取り出し棚に戻すと食堂を通り、まだ残ってるメンツに声をかけロバートの家へ向かった。


「さっき片付けて、とりあえず寝るとこは確保したけど家具とか足りないものあると思うから徐々に揃えてこう」

「まじ助かる、ありがとな、ロバート」

「お礼なんていいよー、俺も楽しいし。服はさっき詰所から少し持ってきたから明日はそれ着て。サイズ、もし合わなかったら調整してもらわないといけないけど……一応俺のサイズで持ってきた。これよりデカいと隊長サイズになっちゃうんだ」


ロバートの方が俺より少し大きいから多分大丈夫だろう。なんか負けた気分になるけど。

さーて、ロバートの家に着いたら風呂に入って寝れば明日はワクワクドキドキ森の探検だー!

ってあれ、そういや風呂ってどうするんだ?


「なあロバートの家って風呂はついてるのか?」

「風呂?」

「身体洗ったり、湯船に浸かる……」

湯浴ゆあみ室のこと?それならあるけど湯船に浸かりたいならうちには無いよ。詰所に行けば、裏にあるにはあるけど、ただ、誰も使わなくてほったらかされてるから掃除しないとだけど」


お湯に浸かりたかったけど外にある風呂掃除するのは大変そうだし、シャワーっぽいのあるならそれでいっかー!


……と、思っていた時期が俺にもありました。

家に着いて、その湯浴み室とやらを見せてもらったところ、俺の思ってたシャワー室ではありませんでした……

いや、形はシャワー室なんだよ。ただシャワーがついてないだけで。

つまりただの水捌けのいい四角い部屋。

ここでどうするのかというと、大きめのタライにウォーターで半分くらい水溜めたら、爆ぜろブラストで熱湯にして、さらにまたそこにウォーターで水足してちょうどいい温度にする。

手桶でそのお湯使って頭から被り、頭や身体を洗う……と言う大変非効率なものだった。

更に発生した問題点。

普段ロバート一人の時は生活魔石を使わず、全て自力でやっていたためこの家に生活魔石が置いていなかった。

だが、俺はまだ魔力操作がうまく出来ない。

水を出すだけでも魔石が必要なので、魔石がないと何も出来ず、お湯も作れないので、結果、タライの中のお湯をロバートに用意してもらうという事態に……


申し訳ない!申し訳なさでいっぱいだよ!早く自立するためにも生活魔石用意してもらおう……

あととりあえず明日、詰所の風呂はどんなか確認しておこう……

汚れを落とし、サッパリしてリビングでひとり、反省会をしているとさっき湯浴みに行ったロバートがすぐに出てきた。

まあほぼ頭からお湯浴びるだけだもんな……カラスもビックリの速さだよ。


「ロバート、さっきはお湯ありがとな」

「いいよ、あれくらい。こっちも魔石忘れてて悪かったな」

「いや、俺が魔力操作ヘタクソだからさ。あとパジャマも借りちゃったから、これもありがと」


これ、寝巻き。と渡されたのはゆるっとしたTシャツとハーフパンツだった。着心地がすごく良くてよく眠れそうだ。


「もし着心地平気そうだったらそれハヤテのにしちゃっていいよ。俺には少し小さくてサイズ合わなくてしまってたやつだから」


俺に少しでかい服が少し小さい……だと……

やっぱり少し負けた気分になる俺だった……


「さて、それじゃあ今日はもう寝ようか!じゃあハヤテ、ゆっくり休んでね」

「おう、ロバート色々ありがとな」


改めてお礼を言うとロバートは照れたように、


「だからもういいってー!じゃあおやすみっ!」


と隣の部屋へ入っていった。

いや、ほんと感謝してんるだけどな。

いきなり死にかけたかと思ったら、回復魔法なんてありえない体験して、更に魔法のある世界なんてとんでもないとこ来ちゃってどうしようもなくなってた俺に親切にしてくれて。

緑珠守護団ここのみんなは本当に暖かくて、異世界に一人放り出された俺を暖かく見守ってくれて優しい人ばかりだ。

みんなに恩返しができるよう、早くみんなのために色々役立てるよう頑張るぞ!!


てことで今日はもう寝るか!


お日様の匂いがするふかふかのベッドで、俺は眠りにつくのだった。


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