第12話 笑われた理由


「……わ……悪い……っ!」


全然悪いと思っていなさそうに、マシュー先輩は肩を震わせながらテーブルの上に突っ伏した。


「……ちょっと、さっきから何?ずっと笑ってて気持ち悪いんだけど……ワライタケでもつまみ食いしたわけ?」


先程から挙動不審なマシュー先輩にロバートはドン引きしている。


「いや、悪気はないんだけど……ハヤテの顔見るとどうしても、さっきの思い出しちゃって……」


さっきの……?

ジェシカにお姫様抱っこされてたアレか?

アレは封印したい過去なので触れられたくないから黙っておこう。

そう思っていたのにマシュー先輩は続きを話し始める。


「ハヤテ、演習場で魔法習ってたろ?」


あれ?お姫様抱っこの件じゃない?


「うん、色々教わってたけど……」

「ハヤテさぁ、回復魔法って使うと光るの知ってるか?」

「え、光る?」


……言われてみると、森でロバートに会った時にかけてもらった回復魔法は、全身暖かい光に包まれてたような……アレって他の人にも光って見えるのか!


「あれ?でもロバートが俺の手を治した時は光らなかったような……?」


俺が不思議に思ってると、それはね、とロバートが教えてくれる。


「回復魔法ってのは使う時に意識すると光らないように出来るんだよ。でないと暗いところとか、敵に見つかりたくない時に回復出来ないだろ?森の時は逃げるの優先だったからちょっとそっちに魔力調整振っちゃった」

「そう、普通は魔力調整すれば光らず使うことができる。けど、ハヤテ初めて使ったんだろ?なら光らないように使うなんてことはしなかったワケだ。なんだったら、ちょっと多めに魔力込めたんじゃないか?」


……そりゃ光るなんてこと知らなかったし、あの時はテンション上がってたから残りの魔力ありったけ注いだ気がするけど。そのせいで魔力切れ起こしたくらいだし……


「ハヤテ、お前……どこに回復魔法使ったか覚えてるか……?あの時、お前……テンション高く『傷を癒やせヒーリング!!』って叫びながら、めっちゃケツ、光ってたんだぜ!?」

「え!?なにその謎の状況!」


驚き聞き返したのはその場にいたはずのロバートだった。いやそれ俺が聞きたいよ……!


「そんな面白いことになってるの、俺気づかなかったんだけど!」

「ロバートはハヤテの前にいたろ?だから見えなかったんだよ。オレ、後ろにいたから、バッチリそのオモシロハヤテ見ちゃって……しかもその後お前、顔面から地面にめり込んだハヤテに慌てて回復魔法かけてたし、ジェシカはジェシカで倒れたハヤテ見て『アタシが運ぶわ!』つって、軽々と横抱きにしてずんずん先に行っちまうし、オレ一人で笑い堪えるの必死だったんだよ……!」


ここにきて食らうお姫様抱っこのダメージ……しかも顔面から地面に落ちてたの?……めっちゃ恥ずかしいんだけど……恥ずかしいといえばテンション高々にケツ光らすって何!?もうトリプルパンチ食らうどころじゃないんだけど……

ボディーブロー三連発食らった以上のダメージに打ちひしがれる俺。


「そんなことになってたの?俺ヘンリーせんせーのとこ行かなきゃ!て必死だったから全然気づかなかった……」


心配してくれてありがとう、ロバート……これで少しは心の傷が癒さ……


「ねえハヤテ!もう一回やってよ!」

「やってたまるかーーーーー!」


心の傷は癒やされることなく、ちょっと増えた。

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