第5話 魔法を使ってみよう①
首輪風チョーカーは丈夫な革紐とワイヤーみたいなものを編み込んで作ってあるようで、ちょっと手直しして俺の首周りのサイズに合わせた後、緑珠のカケラを編み込んでくれた。
つけてみるとすごく馴染むというかしっくりきて、つけているという違和感を全く感じない。それでいてジェイドさんが言っていた加護の力なのか、身体の奥から力が湧き出すような不思議な感覚が身体を巡る。なんとなく首から下げられたカケラをいじっているとロバートさんも俺の石に手を伸ばした。
「ハヤテの魔力は青色なんだね。綺麗な色ー。そういえばさっきハヤテ回復魔法使えるか気にしてたよね?魔力見た感じ使えそうだよ?」
「え、マジですか!?」
「うん。どれだけ回復するかは個人の魔力量によるからそれは俺にはわからないけど。あ、自分の魔力量は後で把握しておきなよ?魔力減ると気を失うから気絶しない量を自分で気をつけないといけないから」
「だったら演習場でハヤテぶっ倒れるまで魔力使ってこいよ。俺はこの後予定あるから付き合えないけどロバートは空いてるだろ?」
「え、いや!それは流石に悪いですよ!」
「了解っす。ハヤテ、大丈夫だから演習場行こう。一人で魔法使って限界超えて倒れたらどうするの。それに魔力の流れのコツもさっき思い出した感じでしょ?魔力放出量の調節しないと自分の魔力量確認する以前にソッコー気絶しちゃうよ」
ロバートさんの言ってることは正しいので申し訳ないなと思いつつ、魔力操作に付き合ってもらうことにした。確かに魔法使うとかよく考えたら一人じゃ何からやったらいいのか全くわからないしな……
ジェイドさんの家兼緑珠守護団詰所の裏にあると言う演習場に向かう。そこはグラウンドくらいの広さの敷地で、中に木でできた人型の的や乱雑に並べられた岩、人工の池などいろいろなものが設置してあった。
真ん中あたりに小さな小屋があり、そこへ案内される。
四人がけの机と椅子、それと備え付けの棚。最低限のものだけ置かれたその小屋で、「とりあえず座って」と椅子を引かれたのでその椅子に腰掛ける。
「個人個人で得意な魔法が違うからとりあえずハヤテの得意なもの見つけようか」
そう言って机の上にロバートさんはボウルみたいな少し深さのあるお皿の様なものを置いた。
「人間が使える魔法には、主に火・水・土・風、それと無属性がある。無属性は回復とか防御とかが括られるけど無属性魔法は種類が多いからまあ火水土風とそれ以外、って覚えておけば大丈夫。じゃあ早速やっていこう。この容れ物の上に手をかざして同じように言ってみて。『来たれ
言われた通り手をかざし言葉を紡ぐ。
「来たれ
すると指先からポタポタと水滴が滴り落ちた。
おお!水が出てる!なんかショボいけどそこは見て見ぬ振りする!
「そうそう、そんな感じ。今はそんなに魔力込めてないと思うけど慣れてきたら込める魔力量で勢いとか変えられるから色々試してみて。あと魔力放出する時に発現場所を意識するとそこで発現するから。例えば今ハヤテは特に意識しないで水の魔力を放出したから身体から魔法が発現したけど、容れ物の底を意識しながらもう一度魔力を出してごらん」
今度は容れ物の底を意識しながら……底……底……
じっ、と底を見ながら呟く。
「来たれ
じわ……と容器の中の水の量が増えた……気がする……
「大丈夫、できてるよ!そしたら今度は火だね。『
「
ボッ、と指先に火がつく。え、ちょ、指燃えてるんですけど!?
ビックリして思わず先ほど出した水の中へ指を突っ込む。
ジュ……とすぐに火は消えたけど、あれ?そういえば熱くない?
指先を見つめ、なんで?教えて先生!と、チラッとロバートさんを見る。
ニッコリ微笑んだロバート先生は俺が言いたいことがわかったのか、うん、と頷くと俺の疑問に答えてくれた。
「火の魔法は自身が出したものなら身体から離れない限り火傷はしないよ。ただし一度身体から離れた炎や、初めから身体から離れて発現させた炎は熱いから気をつけるように。じゃあこの水をお湯にしてみましょう」
「はい、先生!」
先生呼びが気に入ったのかロバートさんはニッコニコになっている。よし、先生の期待に応えようじゃないか。
再び容れ物の底を見ながら「
……あれ?ロバートさんがお茶を淹れた時みたいにボコッと沸くかと思ったらなんの変化もない。確認のため指を突っ込んでみると……
「……ぬるい……」
「魔力不足だね。ま、今は得意属性探しだから問題ないよ。もし威力を上げたいならハヤテをお茶淹れ係に任命しよう!後で練習がてらお茶淹れてね」
しれっとお茶係にされてしまった。でも確かにたくさん練習したいから後でお茶の淹れ方も教わろうっと。
「次は土を試そっか。じゃあ外に行こう」
そして砂場の様な場所へ向かう。
「俺、土魔法はあんまり得意じゃないんだけど……とりあえずやってみるから見てて」
すぅ、と深呼吸をして地面に手のひらを向け集中するとロバートさんは呟いた。
「土よ、
サラサラと少しづつ砂場に子供が砂遊びで作ったような砂の山が出来上がる。
「ふう……ごめん。俺今はこれが限界。普段土魔法使わないからなー。ちょっと練習しなきゃかも。次、ハヤテやってみて。もしこれが得意だったらゴーレムとか作れちゃうかもよ」
「いや、ロバートさんで砂の山なら俺なんて
先ほどまでのショボ魔法を目の当たりにしているので特に期待はしつつ呪文を唱える。
「土よ、
モコモコ……水や火とは打って変わって勢いよく砂が盛り上がっていく。
「お、ハヤテの得意属性は土かな?そのまま何かの形作ってみて!」
ロバートさんが無茶振りをしてくる。何かって何!?
急な要望にどうにか応えようとちょっと考えて、俺はあるものを思い浮かべた。
「スッゲー!砂で作った城かー!!」
「いや、俺も思った以上のクオリティにビビってます……」
出来上がったのは砂の城。ただし、今まで生きてきた中でこんな細かいもの作ったことがないレベルの完成度だった。実際魔法を使わず同じものを手で作れと言われたら絶対作れないよ、こんな夢の国の城なんて……
頭で思ったものをここまで作れるなんて魔法すごいな、と改めて実感した。
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