第2話 目が離せない
「あのさ、元カレの先輩を頭の片隅に置いておこうとかさっき言っておいてなんなんだけどさ……好きなの?」
「今でもってこと?」
「日菜乃、普通に可愛いし、しっかりしてるから年上にモテるじゃん?だから騙されたとか言って別れ話を聞いててさ、あの先輩とまだ付き合ってたんだって思ってたの」
心愛とは高校で知り合った仲だ。当然、元カレの先輩のことは知っている。割と人気で後輩からのアプローチもあったらしい先輩だったから。
「でも、優しい人だったでしょ?優柔不断だったのかもしれないけど」
心愛は見る目があるのかもしれない。妖精の国から出て来たのではないかと言ったが、訂正するべきかもしれない。
私は苦笑いをして、自分の注文したコーヒーを口に運んだ。やっぱり甘いものが飲みたい。キャラメルラテ美味しそうだなと横目に見ながら。
「私もフラれてしまったよ」
心愛はニコッと微笑んで笑って言った。
「それは初耳ですわ」
「言うタイミング間違えたかな?」
「ううん、いいの」
「私も年上の人にフラれた……なんか推しに金を貢いでる私を見てちょっと違うってなったらしい」
「え、それ、本当にフラれた理由それだったら心愛怒らない?」
「大丈夫だよ、お金は確かに大事だけどさ、心はもっと大切だし!うん!」
心愛は自己完結をしたらしく、私の元カレの話に戻った。
「元カレの先輩は断れない優しい王子様タイプだからねー。でも、高校では一回も付き合ってなかったらしいけどね。そん時は本当に好きだったんじゃないの?だって七年も続いたんでしょ?」
「でも、それって私と付き合った後に好きになれたら良かったっていうか、ただ都合の良い女で、七年間付き合ってくれてありがとう、みたいな感じなのかな」
「んー、そうかもねー。好きじゃないなら別れた時にそんなに気にしないで次に行くよ。まぁ、別れた後にそんな風に思えるよね」
「じゃ、まだ好きなのかもね」
私はコーヒーを飲みながらそう言うと
「ま、今日はイケメンで元カレを片隅に置くんでしょ?そんな未練あります!って顔しないで!」
心愛は拳を握り、ガッツポーズをした。今の心愛の服には似合わないポーズだと私は思った。
舞台の内容は、刑事ものの大正浪漫のような恋愛劇だった。原作の小説を数年前に読んだことがある。
主人公の女性はとても綺麗で凛とした雰囲気を纏っていて格好良い役どころ。
舞台俳優が演技をしている時の雰囲気がなんともいえないくらい、目が離せない。心を奪われているという表現が正しい気がする。
私はいつの間にか舞台に夢中になっていた。
主人公を支える男性はひ弱な見た目をしているが強い人。そして何より私が更に夢中になったのは悪役で登場する男性。綺麗に整った顔立ちはメイクなのか分からないけど、綺麗だった。
舞台は二部構成になっていて第一部が終わったところで心愛が私に感想を話し出した。
「日菜乃って意外と面食いだよね」
「へ?」
心愛は少し頬を膨らませていた。
「いや、私……そうなのかな……なんか嫌だな……」
すると心愛はケラケラと笑って
「そうやって心の傷を埋めていきなはれ〜」
とニコニコして言ってきた。
第二部では、悪役の舞台俳優の男性が更に活躍する。綺麗……だとは思ってはいたけど、原作の小説をちゃんと読んだのか、経験なのか、必死に研究したのか、演じ方が上手くて、すごいと思った。心愛も同じことを言っていた。
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