第7話 とある小悪魔系人気インフルエンサー
小悪魔系人気インフルエンサー『ねね』
それがうちの世間からの呼ばれ方。
もう家族からも長いことそう呼ばれていて、皮を被っていた部分も今ではまるで自分の一部かのようになっている。
元々、小悪魔系女子だったわけじゃない。
数人心の内を話す友達がいて、一方的に好きな異性がいて、趣味があって。人と話すときはエセ関西弁を使う、流行りに敏感な普通の女子高校生だった。
動画一本で人生が変わるなんて、夢物語だと思ってる人は私を見てほしい。
今はもう普通の女子高校生じゃない。
『小悪魔系人気インフルエンサーねね』になった。
文字通り、人生が変わったのだ。
そんなうちだから、同じように動画一本で人生が変わる人から目を離せない。
今まで瞬間的にバズって、ある程度のところまでしかいかない人を何人も見ては悲しんでいた。
うちと同じところにくる人は誰もいないんじゃないか……と。
なのでバズって消したらしい彼の動画を初めて見たとき、胸が高鳴った。
胸が高鳴ったのは同じところにきそうな人ができたから、だけじゃない。
彼の顔が私のタイプドストレートだったのだ。
気持ちを抑えきれず、コメントを残してバズりに勢いをかけたのは意図的なこと。
もう少し有名になって、今話題沸騰中のルックトッカーになってくれれば、視聴者から疑問に思われることなくコラボの依頼できるから。
そう思って、彼のことで話題になったときは全部反応した。
〔めちゃくちゃかっこいいんやけど!〕
〔きゃわ!〕
〔うちこの動画、家宝にする!〕
自分が小悪魔系という設定を忘れるほど、夢中になって彼のことを追う。
そんなことをしていたらある日、自称『りくちゃん応援隊隊長きゅうノスケ』というアカウントにわざわざDMで喧嘩を売られた。
普段こういうのは全部無視しているが、その内容を見て返信せずにいられなかった。
〔私はあなたより、りくちゃんのことをよく知ってます。諦めてください〕
「うちの方が知ってるし!」
ボッと対抗心が燃えたのだ。
〔へぇそうなんや。じゃあうちが知らないこと教えてくれへん?〕
〔あの人の初恋は私です〕
「……は?」
〔適当言うのやめーや。応援隊隊長ってアカウント見たときから思ってたんけど、そうやって自称するの普通に気持ち悪いわ〕
〔気持ち悪いなら返信しなければ良かったんじゃないですか? りくちゃんを奪うつもりなら、絶対許さない〕
〔うちからしたら、あんたの許可なんてどーでもいいから。やることやらせてもらいますわ〕
〔絶対やらせない〕
「何なんこの人」
粘着されそうだったのでブロックしたけども。
相手から言われた、〔初恋は私です〕という言葉が頭に残って最悪の気分。
「あーあ。早くコラボだって言ってリアルで会ってみたいなぁ〜」
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