第2話 めちゃくちゃバズってた
学校で九条さんと別れ、俺はすぐ家に帰った。
普段はネカフェやゲーセンに行ってるが、今日は帰ってネットの様子を見たかったので寄り道しなかった。
よくある動画投稿サイトに投稿した動画だったら、こんな急いで帰らない。
この、ルックトックというアプリはとても拡散されやすく。動画の転載なんてよく見るくらい、無法地帯なのだ。
正直、ずっと嫌な予感がしてたまらなかった。
「よいしょ」
俺は背負ってたリュックをベットに放り投げ、椅子に座り、ノートパソコンでSNSを見始める。
なんて検索したら出てくるんだろう。
とりあえず『バズってた』とかでいいか。
「あ」
検索かけた瞬間。椅子から転げ落ちそうになった。
『このイケメンの動画、バズってたのに急に消えたけどなんだったんだろう? ルックトック以外のアカウント知ってる人いる?』
その文に続いているのは、俺が削除したはずの動画。
その投稿がされたのは数時間前で、ハートの数は6.8K。表示回数は820K。
俺の元動画の比にならないくらい見られてる。
「……なんでこんなことになってるんだ」
その真相はすぐわかった。
転載動画が投稿されたコメント欄に、流行りに乗っからない逆張りの俺でも知ってる小悪魔系人気インフルエンサー、『ねね』がいたのだ。
この人は過激なコスプレをルックトックで投稿してバズったのをきっかけに、SNS合計フォロワー数が500万人を超えるほどまで上り詰めた有名人。
そんな人が残したコメントは、完全に火に油を注ぐものだった。
『なんこの人。うちめっちゃタイプだわぁー』
「ふざっ」
思わず大声を出しそうになった。
ねねが残したコメントの下には、ファンの妬み嫉みが大量に残されている。
……ある程度SNSのことがわかってる人が、純粋な気持ちでこんなコメントするか?
するわけがない。
じゃあなんだ?
わざと焚き付けるようなコメントをして、動画を削除して逃げた俺を掴まえようとしてるのか?
あり得る。小悪魔系だから世間には勘違いされるかもしれないけど、十二分にありえる。
「くそ」
このまま見て見ぬふりしたら負けた気がして気分が悪い。
「やってやるよ」
気分が悪いくらいだったら、恥ずかしくて死んだほうがましだ。
とりあえず制服から着替えて、身バレしないようにしてっと。
「よし」
さて何を撮ろうか、だなんて思うことなく。
俺はすぐさまアプリ内で流行ってる動画を探し、早速撮り始めたのだが……。
なんの意味がないことを真剣にやってるのがバカバカしくなりながらも、結局10回以上撮り直しをして満足がいくものを撮れた。
「滑りませんように滑りませんように滑りませんように滑りませんように滑りませんように滑りませんように滑りませんように」
俺はこのとき。
滑るかもしれないという心配のほうが勝っていて。
動画に九条さんしか知らない犬のキーホルダーが映ってたのに気づくことなく、動画を投稿してしまった。
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