第13話 戦い終わって
ピンク髪の女性と
ミコト達を助けるため少しでも戦力が欲しかった僕は、帝都でルイスに会った時に彼女達の事を思い出した、それで何とか助っ人に来てもらおうと、ここに来る前に陸軍基地のリリアナ宛に電報を打っておいたんだ、内容はこうだ「ムネガヒカエメナキミ エアポトイセキデマツ ルイス」あまり女性のコンプレックスを刺激したくなかったけど、これなら草の根分けてでもルイスを見つけ出すと思ったんだ。
結果はご覧の通り、ルイスの命は風前の灯火になっている。
「リーナ、レオナ様……何故ここに」
「何故ですって? ルー兄さんが呼んだんでしょ、何のつもりなのこれは!!」
「え?……ハァ…ハァ……知ら…ない」
「ルイスよ、お前を探すのにこんな時間まで引っ張り回されたんだからな! 下手な言い訳は聞かんぞ!!」
「そんな……本当に……知らな……いんですけど」
何度も爆裂を受け止め疲れ切っているルイスに、リリアナとレオナが詰め寄っている、我ながらヒドイ事をしてしまった……スマン。
「ピュイッ」
ぴーちゃんの鳴き声に皆がそちらを見ると、踏み潰されていた筈のアルレッキーノがぴーちゃんの上に立っていた。
「ククククク、フワッハッハ、よくもまあ次から次へとわたくしの邪魔を出来るもんだねぇ」
またしても右眼が紅く光る。
「いかん!」
「獅子の咆哮」
レオナが爆裂を衝撃波で相殺した。
「ルガールおじさまこの剣を使って下さい」
レオナがルガールに剣を渡す。
「うむ、助かる」
「チェストォォ!」「紫電一閃!」「獅子爪撃!」
ルガール、新右衛門、レオナの三重の攻撃がアルレッキーノを貫いた。
「クフッ、フハハハ、フヒヒヒヒヒ」
アルレッキーノの体はボロボロだった、それなのに何でも無いように笑っている。
「あれでもまだ立ってられるのか……?」
「まぁ、今回はわたくしの負けで良いんだねぇ」
突如アルレッキーノと仮面軍団の体が激しく燃え上がった。
「せいぜい逃げ惑うと良いんだねぇ」
この言葉を最後にアルレッキーノは物言わぬ炎の塊となった。
「飛空艇に燃え移るぞ、早く脱出するんだ」
「おじさま、死にかけのルイスとそこのエルフの子供、生き残った貴族達を脱出艇に乗せて先に行って下さい」
「ヒィィ、駄目だ脱出艇まで燃えてしまう、早く出せ!」
脱出艇に乗せられた貴族がまた自分勝手なことを言っている。
「『ウォーターボール』私のアーツでは気休め程度にしかなりません」
「『ウォータースプラッシュ』私もお手伝いします」
ルミリアとリリアナが水のアーツで延焼を食い止めている。
「「早く行って下さい!」」
脱出艇の第一陣が無事に飛び立った。
「コノムスメ、スガタ、モドラナイ、イシキ、モ、ナイ」
(魔素を無理矢理注ぎ込まれたせいで体に異常をきたしているのかも知れない、かと言って此処では何もしてやれない、とにかく今は脱出を優先するんだ)
「いかん、飛空石が割れてしまっとる、これでは飛ぶことができん」
なんてこった、これが最後の脱出艇なのに故障してるなんて……。
「ぴーちゃんでもこの人数は一度に運べません」
「では女性陣が先に脱出して下さい、我々は何とか持ち堪えてみせます」
「ソウダ、サキ、ニゲロ」
新右衛門とリザードマンは紳士的だった、ぴーちゃんが間に合わない可能性が有るのにレディーファーストだと譲っていた。
「分かりました、その女性をこちらに乗せてください」
リザードマンがミコトをぴーちゃんに乗せようとした時、ミコトの意識が戻った。
「ヴ、ウガァァ」
まだ魔族化したままのミコトは暴れてリザードマンの手を振り解き後ろに飛び退いた。
「イケない、そっちにはもう火の手が!」
「ガァッ」
焼けて脆くなった床が崩れミコトは階下に落ちていってしまった。
「ミコト!」
「ミコトちゃーん」
「リーナ、お前はその三人を連れて先に脱出しろ、あの娘は私が何とかする」
「何とかって、レオナ様を置いていけません」
「行け、これは命令だ!」
「……分かりました、すぐに迎えに来ますから待っていて下さいよ。 行くよぴーちゃん!!」
―――僕は下に落ちたミコトを直ぐに追った、なんの偶然かユウちゃんも一緒に落ちて来たようだった。
「ガァァァ」
「しっかりしろミコト」
ミコトは悶え苦しんでいる。
「奴の【幽世の魔眼】を潰せば元に戻るんじゃなかったのかよ」
(よく見ろ、少しずつだが身体は小さくなってきている、魔素が抜けていってる証拠だ)
「じゃあ今苦しんでいるのは魔族の血と戦ってるせいなのか?」
(このまま暴れていたら炎に巻かれてしまうかも知れないから、なんとか取り押さえられないか?)
「そんな事できるわけ……?! あれ? 触れる、ミコトに触れるぞ!」
普通なら体の表面を滑るようにすり抜けてしまうのに、ミコトの腕はしっかり掴む事が出来た、その代わりにミコトもこちらに干渉出来るらしく引っ掻かれた頬が痛い。
(でかした、そのままミコトを捕まえておいてくれ)
ミコトの見た目は元の愛くるしい姿に戻ってきたが、まだ僕の手を振り解こうと少し暴れている。
「おい無事か? ……な!? どうした事だ、なんでこんな」
上から降りてきたレオナが驚愕していた、何故かは分からないが顔を伏せ肩を震わせている。
まぁレオナには僕が見えない、だからミコトが両手を上げて変なダンスを踊ってるように見えてるんだろう。
「にゃんて可愛い猫ちゃんなんだ、あー駄目だ我慢できん、誰が何と言おうとあの子を膝の上に乗せてナデナデするんだにゃん、にゃんにゃ〜ん怖くないでちゅからこっちにおいで、お菓子もありまちゅよ〜」
「……」(……)
僕とユウちゃんは絶句した、確かに鑑定をした時に猫を云々と書いてあったが、こんなに豹変するとは……。
(あの〜スイマセン、ミコトが怯えているので止めてもらえませんか)
「にゃふん!? ちくしょー誰かいたのか、あー見られてしまった、もう殺せ、ころしてくれー」
もう誰なんだよアンタ、イメージ壊れ過ぎだよ。
(とにかく落ち着いて脱出するために力を貸してくれ)
「もしや人形が喋っているのか? (人形なら見られてもセーフじゃないか) おほん、さあここから脱出するぞ」
(嬢ちゃん、なにか良い手が有るのかい?)
「簡単だ、ここから上部デッキをすべて吹き飛ばす、それで延焼は食い止められる、後はリリアナを待つだけだ」
「え?」 (え?)
「見ているが良い『
ドゴォォォン 轟音と共に飛空艇は降下し始めた。
「うむ、おかしいな? 落ちていってるぞ」
(当たり前だろー!!)
「レオナ様ー!! 時間が有りません、早くこっちに飛び移って下さい」
「よし、行くか」
レオナはミコトとユウちゃんを抱き上げ、華麗にぴーちゃんの背中に飛び移った。
「一体何をやったら飛空艇があんなになるんですか」
「延焼を止めるためにちょっと吹き飛ばしただけじゃないか」
飛空艇は上部デッキどころか上半分が吹き飛んで墜落していった、おそらくリリアナはレオナがなにか仕出かすと思い、ぴーちゃんを全速力で飛ばして迎えに来たのだった。
これで皆は無事に帰れる、貴族連中には犠牲者がでてしまったが、どうせ生き残った奴等も法で裁かれ重い刑罰を課せられる事になるだろう。
この後どうなるか僕には分からない、それを見届ける事もできない、だって僕は…飛空艇と一緒に墜落していってるんだもん。
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