第11話 上部デッキでの戦闘

 デッキでは先に逃げた貴族や金持ち達が捕縛され、搬入口を仮面の男達が包囲していた、そしてこの事件の黒幕アルレッキーノもここに居た。


「待っていたんだねぇ『コモリ アラト』君」


 アルレッキーノは僕に向かって言っていた、人違いではない、聞き間違いでもない、僕が認識出来るんだ……でも何故?


「フフフフフ『何故?』といった顔をしてるんだねぇ」


 僕の心を見透かしている、そう言いたげだった。


「わたくしはねぇ、君が帝都をうろついていた時から目を付けていたんだねぇ、君は『異世界から来た勇者』なんだろう?」


 皆が一斉に僕が憑依してる新右衛門を見た、貴族や金持ちは「おい! オマエ勇者なのか、私を助けろ!」や「金を払うから、私だけでも助けろ」など、自分勝手なことばかり言っている、僕は勇者じゃないのに。


「僕は勇者じゃありません、勇者は別の人です、会った事も有りません」


 嘘はついてない、ウィルも僕は勇者じゃないと言っていた、なのに。


「嘘はいけないんだねぇ、わたくしの魔眼は欺けないんだねぇ」


 アルレッキーノは、魔法陣のような模様が浮かび上がった真っ赤な右眼を指差して見せつけてきた。


 魔眼……そういえば、ミ乃参号も僕を見る時、同じ様な眼をしていた。


「そう、その娘と同じなんだねぇ、なにしろそれは、わたくしの娘・・・・・・なのだからねぇ」


「なん……だと……?」


「フハハハ、いいですねぇ、その顔、実に良い」


 パチン とアルレッキーノが指を鳴らすと、今まで眠っていたミ乃参号が目覚め、僕の腕からすり抜けて テテテ とアルレッキーノの元へと走って行く。


「待て、待つんだ!」


 追い掛けようとしたら、仮面の男達が阻んできた。


「退け、邪魔するなぁ!」


 刀を抜き仮面を狙い斬り掛かる。


「一つ、二つ」


 一人目を上段からの斬り下ろし、即座に刃を返し二人目には斬り上げで仮面を斬った。


 次を斬ろうとした時、エルの悲鳴が聞こえて来た、仮面の男がエルに襲いかかっている。


「ちぃ、間に合えー!」


 踵を返し一足飛びにエルを襲う男を斬り払った。


「ふぅ、大丈夫か?」


「うん、ありがと」


 仮面軍団はハッキリ言って雑魚だ、ルイス、リザードマンも応戦してる、しかし仮面を壊しても、体を斬ってもアルレッキーノが無限に復活させてくるのでキリが無い。


 それに……体を動かすのがキツくなってきた、エナジー切れの前兆だ、一旦憑依を解かないと。


「ルイス! 拙者は今から記憶喪失になる、意味が分からないと思うが、とにかく拙者に仮面軍団と戦うように言って欲しい、良いか?」


「え? あ、え? はい」


「リザードマン、エルを頼みます」


「フガ」 リザードマンは親指を立てて了解の合図をした。


「では、頼む」

 

 憑依を解くと、やはり新右衛門は呆けていたがルイスの「戦え」の一声になんとかこの状況に対応していった。


 また役立たずになった僕は、戦況を見守る事しか出来ない、エナジードリンク赤い牛の翼飲料が有ればエナジーを回復出来たのに…無い物ねだりしても仕方ない。


 アルレッキーノの力を削ぐ方法が有ればと思い、ジッと観察していたら、奴はそれに気付いたのか不敵な笑みを浮かべて「仲間がやられていくのを、何も出来ずに指を咥えて見てると良いんだねぇ」と、挑発してきやがった。


 悔しいがアルレッキーノの言う通り何も出来ずにいる、だが糸口を、この状況を打破できる糸口を見付けたかもしれない。


 奴は仮面を復活させる時、必ずその対象を見ている、つまり魔眼の力で仮面を復活させているという事だろう、視界を塞ぐ事が出来れば復活を止められる筈だ。

 

 何か方法はないだろうか? 僕が見えるアルレッキーノには小石連弾は通用しない、もう一度新右衛門に憑依するにはエナジーが回復するのを待たないといけない。


「クソ、力が欲しい、何にも負けないチート能力が欲しい」


 (力が欲しいか?)

 

 その声は頭に直接響いてきた。


 (力が欲しいか?)


「誰だ」


 (……力が欲しいか?)


「欲しい!」


 (なら、くれてやる)

 

 ……特に何も変わった事は無い


「……」


 (……と言う漫画のセリフが好きでした、テヘッ)


「ふざけている暇はない」


 今もルイス、ルミリア、リザードマン、新右衛門は無限に復活する仮面と戦い続けている、体力の限界も近いだろう、それなのにフザケやがって。 


「一体誰なんだ!」


 (すいません、私デス……)


「え!?」


 それはミ乃参号が大事にしていた勇者人形のユウちゃんだった。


 (オマエに力を貸してやる、その代わりに『ミコト』を救ってくれ)


「ミコトって?」


 (オマエがミ乃参号と呼んでいる娘だ、あの娘の母親が付けた本当の名前が『ミコト』なんだ。 ミコトを救ってくれるか?)


「当然だ! 僕はそのために此処まで来たんだ」


 (なら、あの時貸した俺の剣を出せ)


「剣……あの布の剣か?」


 (それだ、持って来てるだろ)


 僕は、アイテムボックスから【人形の剣】を取り出した。


「これだろ?」


 (それ、だ……汚いな! 血はちゃんと拭いとかないと錆びるだろうが…まぁ良い、まずアルレッキーノの左眼を見ろ、三角の紋様と六芒星が交互に入れ替わっているのが分かるか)


「確かに」 今まで気付かなかったが、三角の紋様と六芒星が入れ替わり浮き上がってる。


 (三角の紋様が仮面を復活させている【ホルスの目】 六芒星がミコトを操る【傀儡の魔眼】だ、因みに右眼の彼岸花の模様が【幽世の魔眼】だな)


「えらく詳しいんだな、人形なのに」


 (その話はまた今度だ、見ての通りアルレッキーノは魔眼を幾つも持っている、それを入れ替えながら戦うのが奴の定石だ、だから先ず【ホルスの目】を潰す、それで仮面は復活出来なくなる、オマエの仲間達がフリーになったらミコトを連れてこの船から脱出させてくれ)


「分かった、でも僕はあまりエナジーが残って無い、大した事は出来ないぞ」


 (それなら一瞬だけ、俺に憑依しろエナジーを分けてやる、くれぐれも奴に気付かれないようにな)


 ユウちゃんの言う通りに、人形の体を通り抜けるように一瞬だけ憑依すると、エナジー総量の三割程度が回復した。


「ありがとう、これで何とか作戦を遂行出来そうだ」


 (それじゃあ、作戦開始だ)

 




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