第4話 -幸せのオーダー

「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさま」


 私こと藤咲ふじさき 華撫かなは両手を胸の前に合わせて、そう声に出した。

 目の前に座る美撫海みなみちゃんも私と同じように手を合わせている。


 今日は私たちにとって、大切な記念日になったわけだけど。

 実を言うと、今日という日は私にとってはダブル記念日になっている。

 と言っても、一つは記念と言うよりは決意表明をした日だけれど。


「美撫海ちゃん、みなみちゃん」

「……? どーしたの??………あっ、も、もしかして美味しくなかった?」


 美撫海ちゃんは私に名前を呼ばれて、最初はニマニマと幸せそうな(可愛いすぎる)顔をしてたんだけど、なんか勘違いして急に顔色が蒼白に変わった。


「ち、違うよ!とーっても美味しかったよ!美撫海ちゃんは私よりも料理が上手で、天才だよっ!!!」

「そ、そんなに褒めたって////そ、その、、、、、、ぐらいしか出ないから///」


「………………」


「か、華撫?」

「はっ!!!」


 い、いけないいけない。

 美撫海ちゃんがあまりにも可愛すぎて、昇天しかけてた。

 な、なんなの。美撫海ちゃん。

 お、お付き合いすることになったら、急にデレてくるじゃん。



―――



 そう、これが私が昨年の今日、決意表明をした理由でもある。



◇ ◇ ◇


 ちょうど、昨年の今日と同じ日付けの日。


 私、藤咲ふじさき 華撫かなは我慢の限界だった。

 どうして、私だけがこんなに苦しい思いをしなくてはならないのか、世の中を呪う勢いだった。



―――だって幼馴染で私の大好きな女の子が、ちっとも私を意識してくれないんだもん!



 中学時代、どれだけ私がアピールしたことか。

 片時も好きな子から離れることなく。好きな子が何処に行こうにも必ず後ろを着いていく。


 私は恋愛漫画での知識しか無かったからだけど、みんな自分よりもか弱い生き物に愛情が芽生えるんじゃないの???

 だから好きな子の前では小動物みたいなフリをして、好きな子がいない場所では逆に好きな子に変な虫が近寄らないように牽制してたのに。


 一向に好きな子が私を恋愛的な目で見てくれることは無かった!!!

 もう我慢の限界だよっ!


 私はこの時に誓った。

 昔の人たちは偉大である。

 ここは先人の知恵を借りて、この手段でいこう。


『押してダメなら引いてみろ』


 これで、高校に入ったら私は今度こそ絶対に好きな子と結ばれるんだ!

 よし決めた!今日決めた!

 そろそろ私も本気を出す時が来たんだ。


 応答せよ!私のブレーキの壊れた恋心、応答せよ!!こちらJC、好きな子を百合堕ちさせます!どうぞ。


 高校生になっても、私のことを見ててよね!

 美撫海みなみちゃん。



◇ ◇ ◇


「ねぇ、華撫?」

「んぅ?なーに??美撫海ちゃん」

「ふふふ。好きだよ♡」

「〜〜〜〜〜ッ!!私も!だーい好きだよっ、美撫海ちゃん!!」




 応答せよ。

 昨年の私、応答せよ。

 こちら一年後の私、、私は今―――






―――である。どうぞ



━━━━━━━━━━━━━━━


〈完結〉

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こちらJK、そろそろ好きな子を百合堕ちさせます。どうぞ 百日紅 @yurigamine33ki

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