第3話 - 二人の尊き乙女に敬礼
「
記録:
え、告白?待ってまって。今、そーゆー流れだった?そーゆー雰囲気だった?どこから持ってきたの、そのムードは!??
華撫はいじらしく両手の指先を絡めてはいじいじして、瞳もうるうるとしている。
え、えぇ?(可愛すぎ)これ、マジじゃん。いや、反応ガチじゃん。え、てか、待って正直に言うと急すぎて頭回らないんだけど。でもすっごい嬉しい。え、もちろんOKよね。すぐに返事しないと―――――
でも待って。
ほんとに、これでOKだして。
晴れてめでたくお付き合い?
それで、良いんだよね?
だって、華撫から好きって言ってくれてるし、てことは両想いって分かったし。
正直、華撫を百合堕ちさせるって息巻いてたけど、それでスタートがお弁当作りとか、私って案外いずれくる告白に怯えてたところあったし。
自分から告白するのとか、
―――――怖いし
そうだよ。
せっかく向こうから伝えてくれたんだもん。
受け入れようよ。
そしたら、自分は下手に苦しい時間を味わわないで済むし。
「美撫海ちゃん、私が絶対にあなたを幸せにするから、………だめ、かな?」
「わ、わた、私、、、、は」
簡単だよ。
一言「いいよ」って言うだけよ?
いいよってなに?そんな上から目線で受け入れてあげるみたいな姿勢で本当に良いと思ってるの?
じゃあ、私からも「好きです。付き合ってください」って言うの?
ただでさえ周りの子たちよりも遅れを取ってるくせに、そして百合堕ちさせるとか息巻いてたくせに。
始めたことがお弁当作り?話になんないよ。
どうせ自分から告白する前に諦めるだけだよ。
…………………。
「華撫、ごめんね」
「……………………え?」
「私も華撫が大好きです。つ、つきあって!」
私はそう言って、手を前に突き出した。
俯く。前が見えない。
顔を見られたくない。
何やってんだろ私。
あのまま、「いいよ」って言うだけで済むはずだったけど、でも「大好き」って、自分から言いたくなったんだ。
声も震えた。
あはは。涙がこぼれちゃいそうだ。
告白って、こんなに辛いんだなぁ。
やっぱり、華撫は成長してるんだ。
昔は私の後ろを着いてくるばかりだった気弱な女の子が、こんなに辛い告白の痛みに耐えて勇気を出して一歩踏み出した。
そんなの、本気を出すはずだった私は立つ瀬がないじゃない。
差し出した手を、彼女は取ってくれるかな。
言い方を変えれば、私の告白を華撫の告白を無下にした上に成り立っている。
せっかく勇気を出してくれたのに、ごめんね。
でも、決めたんだよ、私。
華撫に女の子の良さを教えるのは、私なんだから。
これからもアピールをしていくのは、私なんだから。
だから、お願い。
この手を取って。
私の告白を受け入れて!!
「み、美撫海ちゃん」
「………うん」
「お、お弁当、作ってきてくれたの?」
「………うん、……ん?え?」
やらかした。
私は、お弁当を持つ手を間違って前に出してたらしい。
焦りすぎでしょ!私のばかっ!!
「な、なんで?美撫海ちゃん、私がいつも自分のお弁当持ってきてること、知ってるよね??」
「(´•ω•`)」
そうだった。
そういえば、華撫は毎朝自分でお弁当を作って持参してきてる家庭的な女の子でもあった。
ほんと、、
覚悟を決めてからの私、逆に舞い上がりすぎでしょ。
失敗しかしてないじゃん。
あー、恥ずかしい。
これじゃあ、華撫に失望されてもおかしくないよ。
「ふふふ。………でも、ありがと。しっかりとそれは受け取ったから!!」
「えっ?」
華撫はそう言って、私の手からお弁当をとった。
受け取ったのニュアンス、お弁当のこと?
それとも、、、私の告白の、こと?
「そ、それってどっち―――」
「ふふふふふ♪せっかく美撫海ちゃんが私のために愛を込めて作ってくれた手料理なんだから、早く二人っきりで食べちゃおーよ!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ、!!!」
どっちなの?
私の告白はOKなの?ダメなの?
どっち!???
「ほんとにありがと、美撫海ちゃん。ずっとずっと大好きだよ。これから、よろしくお願いします」(ボソッ)
華撫の照れ隠しは、この時の私には聞こえずに、ただ空き教室の窓から吹く風と一緒に流れていった。
それもまた、一つの思い出。
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