録音と映写の魔道具の発展先

 母上はがっかりした様子だが、ここで退室するような真似はしない。

 最後までちゃんと付き合ってくれるようだ。



「じゃあ、おじちゃん。こっからが大本命だね。技術的に難しいこともあるかもしれないけど、未知の領域だから頑張ってね!」


「お、おう。嬢ちゃんがそこまで言うと不安になるな……」

「大丈夫、おじちゃんならワクワクしてくれるって信じているから!」


「つまり、持ってきた残りのこの二つで新しいことに挑戦するのじゃな?」

「うん、大正解。頑張ろうね!」



 俺の目の前にあるのは、録音の魔道具と映写の魔道具だ。

 まずはこの二つの仕様と機能、改良できたところを聞き出そう。



「じゃあ、改良できた部分を教えて、おじちゃん」


「うむ、まずは魔石の魔力の消費量じゃな。これはまだ下げられるような気もするんだが……、現段階では、どちらの魔道具も従来の4割から5割まで下げることに成功した。従来よりも長く使えるようになったぞ」

「すごいね! 消費量下げたのに、まだ下げられるの!? 長く使えるようになって、これは期待できそう!」


「それから、機能面では両方の改良に成功しておる。録音の魔道具では、録音容量を従来の三倍近くまで増やすことに成功した。今はまだ改良中だが、一つずつ録音音声を選べる機能も追加予定だ」

「長く録音できて、拡張性もあっていいね!」


「映写の魔道具はより鮮明に映るようにを目指した。だが、どうしてもツルツルとした壁や布が必要になることが判明した。それに、室内を若干暗くしないといけないのも気にはなる。これもいつかはどうにかしたいと思っておる。あと、映像の記録する媒体を記憶版と名付けたぞ」



 おお、思ったよりも改良されている!

 映写の魔道具の方も実際に見たが、映画館なら十分な画質だ。

 さてさて、こっからが本命だぞ。

 おっちゃん、しっかりついてこいよ!



「おじちゃん、頑張ったんだね。さすが、私のおじちゃん!」


「そ、そうか……!ワシも頑張ったかいがあったわい」

「でね、こっからが本命なの」


「なに!? こっからが本命じゃと!?」

「映写の魔道具と連動させて、録音の魔道具で音を鳴らすの。映写の内容もこちらからの操作で任意に動かしたりできる?」


「ほお? ちょっとわからんな。どういうことだ?」

「絵で説明した方がわかりやすいかな?」



 俺はゲームセンターにある体感型の筐体機のようなイラストを描く。

 下手くそな絵だけど、身振り手振りも合わせれば伝わるだろう。



「なるほど。身体を動かすことで、映写の内容が進む。そんでもって、さらに音も連動させると……」


「難しいかな?」

「身体を動かすことで連動して反応する機構が少し難しいな。それに、録音の魔道具の改良の方向性を考え直さないとな。だが、出来ないわけじゃないな」


「ホント!? おじちゃん!!」

「ああ、身体の動きを連動させるというのは、難しいのは難しい。だが、光の魔石を使って、身体の動きを捉えられれば出来る気がする」


「そっかー。出来るんだー! じゃあ、あとは映写の内容だね」



 ここでさらに説明を加えて、ゲームの進行を説明する。

 とりあえずは男性用と女性用に作ればいいだろうと思い、二つの展開を説明する。



「ふむふむ、それくらいなら出来るぞ。問題は音だな。現実的な音を追求するのか、作り物めいた音にするのか……」


「そこはあまり現実的にしなくていいよ、今回はまだ触りだからね。身体の動きと連動ができればいいの。次の段階に入った時には音質にもこだわってほしいけどね」

「ぬ? 次の段階があるのか? 何をする気じゃ?」


「それはね……」



 俺はゾロにだけ聞こえるように話す。

 母上が不思議そうな顔をする。

 説明されたおっちゃんは半信半疑な顔をする。



「随分面白いことを考えるな。だが、本当に効果があるのか?」


「間違いなくね。種類を用意すれば、それだけ売れるし、それぞれの人気も出るよ」

「ふうむ、そんなものなのかねえ?」


「ディーネ、何を話しているのですか? 私にも教えて?」



 ここで母上が食いつく。ちょうどいい、女性陣の意見も聞いておこう。

 ナンシーにもきっと推しと言える存在はいるだろう。



「ふふっ、では参考までにお母様たちにも聞いておきましょう」


『?』



 俺は母上やナンシーをはじめとする王宮メイドたちの推しを確認する。

 ふふっ、これはこれはいいデータが取れそうだぜ……!

 おっちゃんには『体感型の訓練機』の制作に集中してもらおう。

 俺はこっちのデータ集めに集中するかね。




 第二段階からが本番なんだよ、ふふっ……

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