第28話 シータのヨミ
オレはシータにスマホのデーターは一度検証をしてから、姫達には見せた方が良いかもしれないと念話で話した。
シータは部屋にいたマーゴット姫とリチャードの記憶を消し去り、離宮へ戻した。
「ルイス王子殿下はロイ王太子殿下の婚約者ロゼ・ダストン公爵令嬢とは会ったことないの?」
画面を見たシータがルイス様に聞く。
皆が部屋に戻った後、私達3人はスマホの写真データを検証している。
「ああ、隣国の令嬢はあまり知らないな」
ルイス様が答える。
「これはロゼ令嬢だよ。姉さまの異世界の姿ではないと思う」
「えっ?そうなの??」
私は驚く。
横のルイス様を見ると罰が悪そうにしている。
そうだよねー。可愛いって言ってたものね。
「それでベルファント王国の王太子と婚約者がどうしてここに映ってるんだ?」
「前にね、僕が使役紋の犯人を追跡したことがあったでしょ?その時の1番目というかスタート地点にいた人たちが、このスマホっていうやつを通って異世界と行き来してる形跡があったんだ。姉さまを封印しようとしていたのか、異世界へ渡る媒介にしていたのか、そのあたりが良く分からないままだったんだけど、このお二人がここに映ってるなら媒介にされた可能性が大きいと思う」
「媒介?って、何をするの」
私はシータに問う。
「僕、詳しく命を落とした場面を見てないけど、この画像が正しいなら二人ともスマホを媒体にして、異世界に飛ばされているんじゃないかと思うよ。昏睡もしてないし、亡骸はないんじゃないかな?」
「えっ!」
私とルイス様の声が重なる。
「このロゼ嬢はどうなる?」
いや、何故ロゼ嬢だけ心配するのよ、、、。
はっ、もしや新たな破局案件?やっぱり断罪なの?と斜め上に行ってしまう私。
「すでにベルファント王国に、ロイは居ないということか?それは不味いだろう。これからのこともあるし、はっきりしておいた方がいいな。姫に聞こう」
ルイス様はマーゴット様に聞くつもりの様だ。
シータが腕を上げる。
もしや!!召喚?
スタッとマーゴット様が舞い降りた。
はぁ~かっこいい。
素敵!運動神経の違いを感じた。
「なんと!皆さまどうされたのですか?急ぎの用事かとは見受けましたが、、、」
マーゴット様この状況に於いても動じずにそう仰った。
「姫、ロイとロゼ嬢を見つけた。本当は王宮で昏睡なんてしていないんじゃないか?」
ルイス様は単刀直入に聞く。
マーゴット様はとても驚いた表情になり、次の瞬間、目から大粒の涙が零れだした。
そして、口元に手を当てながら、震えた声で話す。
「はい、二人共戦いの最中に消えました。そして何も残っておりません。偽ってしまい申し訳ございません」
言い終えると両手で顔を覆って泣き出した。
私はマーゴット様に近寄り、何も言わず背中をさすった。
そこへ、ルイス様が頭に話しかけて来る。
「執拗にリゼを狙ってくるのは2人を戻って来れないようにする可能性もあるな」
「な、なるほど」
「俺は最初、犯人はランドル王国の秘密を知っていて、オレを殺すより手っ取り早くリゼを殺して国を乗っ取るつもりだろうと思っていた。だが、あくまで狙いはベルファント王国だったんだな」
そこに安定の割り込みでシータが入る。
「ルイス殿下、そのヨミですが、この国の秘密も知られてしまってる可能性が充分あります。なぜなら、スマホに始祖の壁画が映ってました。そして、竜神王ルーの花嫁の姿は姉様にそっくりです」
『!!!確かに!!!』
私たちの心の声が揃う。
「シータ、あなた天才ね!」
私は感嘆の気持ちを述べる。
「僕は始祖帰りの魔術師だからね。リゼ姉さまも精霊王の血を受け継いでるし、僕たちが揃えば最強だよ」
「精霊王?」
私が首を傾げる。
「シータ!まだ時が来てない」
ルイス様が止める。
「ごめんなさい。口が滑っちゃった」
正確には心が滑ったよね?とツッコミを入れてみる。
「リゼ、その話は時が来たらする」
「分かりました。今は毎日いろいろありすぎて、それどころじゃないですから、丁度いいです」
「リゼらしい回答だな」
そこで、泣いていたマーゴット様が顔を上げた。
「皆さま、ありがとうございます。ランドル王国は凄いのですね。わたくし達では何も解決できなかったと思います」
「姫、長年平和にやってきた隣国同士だ。気にしないでいい。あとはどうやって救出するかだな。シータ、考えはあるか?」
「僕たちが、その異世界に入り込むよりも、土地勘がある姉さまに入ってもらった方がいいと思う。二人を見つけて合図してくれれば、僕がこちらから魔力で引っ張る。そして、姉さまも戻ってきたら、このスマホは破壊する」
「い、異世界!?兄たちは異世界に飛ばされているのですか?そんなことが可能なのですか、、、理解が追いつきませんが、本当に良く見つけてくださいました。心より感謝申し上げます。私からリチャードには伝えておきます。兄たちを呼び戻す際は、私たちに出来ることはお手伝いさせて下さい」
マーゴット様は深々と頭を下げられた。
「大丈夫だよ!異世界なんて、僕は楽しみで仕方ないんだ!!王女殿下も心配しなくていいよー」
シータが軽いノリで言う。
何となく拍子抜けして全員で笑った。
シータの準備が整ったら連絡をくれるというので、私たちは再び解散した。
私とルイス様は元の部屋(魔塔内)に戻ってきた。
「何だか、毎時毎分忙しいですね、、ここのところ」
私は、ため息をつく。
「そうだな、そういう時期なんだろうな」
ルイス様は適当な回答をしてくる。
「お疲れのところ申し訳ございませんが、ひとつよろしいですか?」
「ああ、リゼ何だ?」
「私じゃなかったですね」
ルイス様がギクッとする。
「いや、あれは本当に済まない。言い訳になってしまうが、今、目の前にいるリゼがいい」
悲しそうな顔をして何を言っているのだか、、。
私は思わず吹いてしまった。
「ふふふ、ルイス様の失敗なんて中々ないですからね。今後の必殺技としていただいておきます」
「本当にリゼがいいんだって」
ボソボソと言いながらルイス様が抱き着いてきた。
「もう仕方ない人ですね」
ルイス様の頬にキスをした。
「リゼ、、、ありがとう」
ルイス様もお返しに私の頬にキスをくれた。
「オレ、今日帰る部屋がないんだ。ここに一緒に寝てもいいか」
あー、忘れてた。
一緒に部屋無き子になったのだった。
「私は構いませんけど、怒られませんかね?」
「誰に?」
「陛下とか王妃様とか」
「多分、大丈夫だろう」
「なら、一緒に寝ましょう」
その夜は仲良く手をつないで寝ました。
二人共、爆睡コースで。
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