第27話 ラーの鏡

 「ただいま、待たせたな。ん、一箇所に固まって何をしているんだ?」


 私たちがスマホの写真データを閲覧するために集結したところへ、ルイス様とリチャードが帰還した。


今ここには、私、マーゴット様、シータ、ルイス様、リチャードの5人が居る。


王宮筆頭魔術師ルータは国王に呼ばれて留守だ。


「この中にある絵の記録を見ようとしてたんです。ルイス様も一緒に見ましょう」


私は片手にスマホを持ったまま手招きをする。


「リチャードさんもご一緒に!」


私のスマホを取り囲むように皆が立つ。


「では電源を入れますね」


「えっ!?」


マーゴット様が驚く。


ああ、そうだった。ルイス様とマーゴット様のツーショット!!


マーゴット様には悪いけど次に行きます。


「次は、パスワード、、、よし!」


待ち受け画面が開いた。


そう、王家の霊廟だ。


「あっ!」


私は焦る。


これは王家の秘匿、、、。


マズい!!


チラッとルイス様を見るとシラっとしている。


これは触れずに行けということかな?


私は写真のアイコンを押した。


ザーッと写真が表示される。


「えええ、これは一体何なのですか?」


マーゴット様がとうとう質問して来た。


そう言われることは先に予測していたので、予めシータから過去や未来を見れるランドルの鏡、略してラーの鏡ということにしようと指示があった。


「これは過去や未来を見れるラーの鏡という王家の秘宝なのです。この中に今回の事件の糸口がないか探してみようと思います」


私は小さなコマの中にスクショやダウンロードしたスチルがないかを探す。


あった!指でタッチして広げる。


「これは、マーゴット様とルイス様ですね」


閉じる、次。


「これはマーゴット様とルイス様ですね」


あー閉じる、次。


「これもマーゴット様と、、、ルイス様ですね」


閉じて閉じて、次。


「うー、これもマーゴット様と、、、」


作業を繰り返すこと10回と、その時。


「リゼ!ちょっといいか!」


あー、不味い!


ルイス様がご立腹の様子。


「皆、済まない。ちょっとリゼと確認したいことがあるから席を外す。休憩しててくれ」


周りの人たちには穏やかに伝えてるのが、とてもコワーイ!



そして、ルイス様は私の手を取って廊下に出た。


「リゼ話がある。どこか部屋に入ろう」


「それなら、さっき用意してもらったお部屋に、、、」


私は自分の部屋に案内した。



 「うかつ過ぎるだろう!」


 部屋に入るなり、ルイス様は頭を抱えた。


しばしの沈黙。


口火を切ったのはルイス様だった。


「今、シータに、皆の先ほどの記憶を消せないか聞いた。どうやら出来るらしいから、今のは無かったことにして、もう一度やり直すぞ!」


「えええっと、どうしたら正解ですかね?」


事態を良く分かっていない私は素直に聞いた。


「まず、竜の絵は禁止する。それから、事前に絵を用意してから見せろ。あれじゃ意味が分からないだろう」


「確かに私の趣味ばかりになってましたね」


テヘペロって可愛く誤魔化してみたけども、今日のルイス様は無表情。


「今から二人で先に確認するぞ、開けてみてくれ」


「はい、分かりました」


怒らせたら怖そうなので、ちゃんとします。


私は再度、画面を開いていく。


「思ったんだが、その竜神王ルーと彼女の絵は消せないのか?勘がいい奴は気づくかもしれないだろう」


「ほかの写真というか絵に出来ますよ。見ながらいいのがあったら変更しますね」


私たちは写真のアイコンを押してデーターを開く。


私は再びスチルを探す。


「リゼ、何故、絵だと分かるのしか大きくして見せないんだ?ほかのやつは何なんだ?」


「他のは写真といって、前世の私とか物とか風景を映したものなんです。異世界なので見ても参考にならないと思います」


私はデーターを繰りながら、答える。


「待て、これ!」


ルイス様が画像の中の1コマを指差した。


私は良くわからないまま拡大した。


「誰だ?」


一人の女の子がにっこりとして映っている。


「多分、私です」


「想像したこともなかったけど、リゼはいつの世もかわいいな」


は?何を言い出すのルイス様。


「可愛いですか?私、何も覚えてなくて、名前も、、、」


「俺はこの異世界でリゼに出会っても絶対好きになると思う」


話が脱線しまくりですよ、ルイス様。


「ありがとうございます。嬉しいです」


そして、また小さなアイコンに戻して検索を続ける。


相変わらず、マーゴット様とルイス様しか出てこない。


「なかなか出てこないですね~」


画面をスクロールしながら私がぼやく。


「ちょっと待て!」


ルイス様が、また1つの写真を指差す。


何だか拡大する前から嫌な予感がした。


ポチっとな!


「これはどういうことだ!?リゼ?」


あー、いやいやいや、私らしきとイケメンが写真におさまってるねぇ・・。


「多分、前世の恋人ではないですかね?私もお年頃で死んじゃったみたいですし・・」


開き直って答えてみた。


ルイス様が眉間を抑えて、何やら唸っている。


ん?嫉妬ですか??


「リゼ、今から言うことは少し怖い話かもしれない。聞きたいか?」


ルイス様が低い声で言う。


えっ何?怖いんですけど、、、。


「それって断ったら、聞かなくてもいいのですか?」


「いや、聞いた方がいいかもしれないぞ」


「えーっ、ならば覚悟を決めて聞きます」


私は息を呑んで、ルイス様の言葉を待つ。


「その男はロイだ」


「はぁーーーーー?ロイ王太子殿下がなぜ???」


「このデーターはちゃんと全部検証した方がいいかもしれない。シータも交えて仕切りなおそう」


ルイス様はそう言うと、私からスマホを取り上げた。


「大体、夢の中から持って来れたって言うのも変なんだよな。何かが干渉してリゼの夢に入ったとか、利用しようとしたとかいう線も考えてみた方がいいかもしれない」


そして、スマホをテーブルに置いて、私に手を伸ばしてくる。


「何が忍び寄ろうと、オレはリゼを渡さないからな」


そういうと強く抱きしめられた。


「私もどこにも行きませんよ」


私も強く答え、ルイス様の背中に腕を回して、力を込めた。

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