第21話 霊廟
「ル、ルイス様?王家の霊廟って、気軽に行っていい場所じゃないですよね?」
「そうだな。陛下に許可はもらっている。心配するな」
先程、私の部屋から切り立ったこの岩山の麓までは、ルイス様の魔術で転移して来た。
ここから先は強い結界がある上、歩いて登れない険しい岩山で、今はルイス様が私を抱きしめたまま、ふわふわと飛んで移動している。
私は何もせず、抱っこされているだけ。
何とも、気楽なものだ。
「ルイス様って、万能ですよね?」
唐突に私が質問するとルイス様が肩を揺らす。
「リゼって突然閃いた様な質問をしてくるから大好きだよ」
ルイス様はクスクスと笑う。
「大好きなんですね?」
自分に都合の良いところは拾う。
「ああ、大好きだよ」
うおっ、返り討ちだ!!
あー、恥ずかしい。
私は真っ赤になってそうな顔をルイス様の胸に押し付ける。
「リゼ、もう着くぞ」
私達は大岩の前に降りた。
ん?周りには何も無いけど?
すると、ルイス様が目の前の大岩に触れた。
「うぉー!何だコレ!!」
思わず叫ぶ。
「ブッッ、ハハハ」
横のルイス様、笑い過ぎ。
何がスゴイって、岩に白い光が走って複雑な紋様が浮かび上がって来たからだ。
そして岩はゆっくりと持ち上がっていく。
その先は階段?
中は真っ暗ー!!
怖い、、、。
私の気持ちを察したルイス様は私の手を握って優しい笑顔を見せる。
「心配しなくても大丈夫だ」
はいはい、何処にでも付いて行きますよ。
階段を降りると内部は思ったより、人工的に造られた空間だった。
壁にはタイルも貼ってあって、ツヤツヤしている。
足元は石畳。
何故、辺りがしっかり見えているかと言うと、ルイス様が光っているからだ。
イケメンだからか何故か理由は分からないけど、室内に入ってからふんわりと光っている!!
しばらく進んでいくと高さが天井まである大きな両開きの扉が現れた。
ルイス様がゆっくり押し開けると、とてつもなく広い空間が現れる。
そして真正面には、かなり大きな壁画があった。
「あれをまず見せたいんだ」
ルイス様はその壁画を指差す。
今はまだ薄暗くて、何が描いてあるのかよく見えない。
徐に横のルイス様が、腕を一振りした。
すると、部屋全体が明るくなる。
パッと壁画の絵が目に飛び込んで来た。
「えええぇーっ!あっ、あれって!あれですよね?ルイス様?」
「そうだね。あの絵を見た時、本当に驚いたんだ」
私たちが思い出していたのは、スマホのメイン画面の絵!!
黒い竜が私に何かをくれているスチルらしきやつ。
あー、壁画はここにあったのかー。
では、やっぱり、、、ここは乙女ゲームの世界?
ルイス様とは破局確定?
さっきまではウキウキしてたのに、急にテンション駄々下がりになる物を見せられて、気分が激しく沈む。
今、どんな表情になっているかも分からない。
「リゼ、何か心配事?」
ルイス様は心配そうに私の顔を覗き込む。
「いえ、ここが現存するなら、乙女ゲームの世界で間違いないのかなと残念に思っていたところです。ルイス様とマーゴット様はやっぱり結ばれるし、私はそろそろ断罪されて殺される、、、のですよね?」
ルイス様は私の言葉を聞いて、怪訝な表情になる。
「は、何言ってるんだ?リゼ?ここに来る途中も、オレは愛を囁いてたと思うのだが、、、」
ルイス様はブツブツと何か呟く。
「ああ、もうルイス様、お気を遣わずに、バシッと要件を言ってください。覚悟は決めています」
私は長引くほどに悲しくなりそうで早く終わらせて欲しくなった。
それを聞いていた、ルイス様は真面目な顔をして私の手を取り、あのスチル写真と同じ位置に移動する。
そして、私の手を取ったまま跪いた。
そのまま、顔を上げて私を見つめる。
「エリーゼ・ベルカノン嬢、永遠かと思う時を経て、ようやくあなたと巡り会えた。この世はあなたと共に歩み、共に民の幸せを願いたい。どうか、私と結婚して欲しい」
ルイス様は私を真っ直ぐ見て、ゆっくりと心を込めて言った。
え?え??プロポーズっぽいけども、プロポーズなの?コレ!?えー、どうしよう。
私がこのプロポーズを受けたら、マーゴット様は王妃になれなくて、国が荒れてしまったら、、、。
無駄に考え込む私を、ルイス様は美しい美貌のご尊顔で、じーっと見つめて待っている。
あー、断罪される日が、また別口でやってくるの?
うーん、でもルイス様が大好きな気持ちは沢山あるのよ私も、、、。
「エリーゼ?」
あ、ルイス様ちょっと待ち長かったのかしら?
ああもう、私の長所は素直よ素直、そして成るがままによー!
「はい、喜んで」
ために溜めて、私は笑顔で返した。
するとルイス様は私の左手を取り、指輪をはめた。
「えっ、指輪!?」
「そうだ。正式な婚約指輪だ。これでリゼが正妃になる事が確定した。今後、誰にも変わらない。悪いがオレは姫と結婚する気なんて全くない。世の中がどうなろうと、リゼしか無理だからな。変な作戦とか立てるなよ」
あー、お見通し。
「でも、世の中が荒れたら困るのではないですか?」
私は首を傾げる。
「その時は一緒に戦おう。リゼ」
「えっ、戦いに誘われている?、私」
「ああ、守護精霊も守りの盾も発動してるし、立派に戦えるぞ」
何だか嬉しそうな、ルイス様。
「ん?守護精霊って、、もしやあの大きな白狼?」
「そうだ。ランドルの妖精は森で育ったからな」
「ランドルの妖精って、子供の時のただの愛称ですよ」
「ランドルの王家及び四大公爵家には男の子しか生まれない」
「そんな話も何となく聞いたことがありますけど、何でなのでしょう?」
「そうだな。その前にオレの話をしよう」
「オレはこの国の始祖である、竜神王ルーの始祖返りと言われている」
「何故、始祖返りと言われたんですか?何か決め手となるものでも?魔術を沢山使えるからですか?」
私は始祖返りなんて、ファンタジー色の強い話が出て来て、内心ワクワクしていた。
「オレが始祖返りだというのは王家の秘匿の一つだ。リゼ、口外しては絶対にダメだ」
「分かりました」
私がアッサリ答えると、ルイス様は企んだ顔をする。
途端、紫色の霧が渦を作って、ルイス様を取り囲んだ。
じーっと私はその様子を何事?と思いながら見ていた。
「ふぉー!!そ、そんな!」
霧が晴れると何と!ルイス様は黒い竜になってしまった!!
「コレがオレのもう一つの姿だ。怖いか?、、、あー、リゼが普通の反応するわけないよな」
私は竜になったルイス様の鱗があまりに美しいので、腕を伸ばして撫でようとしていた。
「あ、触ってみても?」
「どうぞ」
そっと、触れてみた。
ツルツルしている。
黒い鱗をは所々金粉を散らしたかの様な煌めきがあり、とても美しい。
「ルイス様、竜になれるって、いつ気づいたのですか?」
「皆の話だと、生まれて来て、初めて泣いた時に子竜になったらしい。母上は可能性を聞いていたとはいえ、心底驚いたという話を今だにしてくる。オレとしてはどちらの姿でも違和感なく過ごせるが、周りはそうでは無いだろう。結構、気を遣って生きている」
思わず、笑ってしまった。
「ルイス様が気を遣って生きているって、皆さん絶対知らないですよ」
「何となく失礼だな、リゼ」
珍しくすねている?
でも竜だと表情が分かりにくい!!
「あー、あの、で、なんで竜なんですか?」
「いい質問だな、リゼ。それはな、、、」
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