第3話 お目覚め

 6月4日 曇り


 目覚めたら夕方だった。丸一日以上、気を失ってたらしい。昨日は、王女様のご案内係として学園に行く予定だったのにどうしよう!!!!もう遅刻のレベルではないよね?スタート前から詰んでる、、、。ルイス様には執事のモネじいが連絡してくれたとのこと。ルイス様、大丈夫だったかしら?いやいや大丈夫な訳ないよね。明日ルイス様に絶対謝ろう。しっかり謝ろう。私はやっぱりドジすぎる・・・。王妃失格!だわ、痛感した。




 日記のペンを置きつつ、一日を振り返る。


なんとも奇妙なことが起こったのだ。


それは足の小指の事件ではない。


指はしっかり治療されて腫れもなくなっていて今は全然痛くない。



 昨日、私は急いで部屋を出ようとした。


侍女のレンリーによるとガツッと大きな音がしたあと、悲鳴もなく倒れたらしい。


駆け寄ってみると気を失ってるし、呼んでも反応がないので頭を強く打ったのではないかと周りの使用人たちは騒然となったそうだ。


「すぐに執事が走り回って、お医者様を呼びました。そして王宮のルイス王子殿下にもご連絡を入れました、私達とても心配したのですよ」


侍女のレンリーが涙を流しながら言うので驚いた。



多分、その頃、私は夢を見ていた。


最初は、真っ暗な中に一人で座っていて、次に急に眩しい光が近づいてきて・・・,


「キャー!轢かれる!」

 

私は叫んだ。


目の前には大型トラック。


え、トラック???消えた。


私、通り抜けた??


恐怖で震える呼吸を落ち着かせようと無理やり深呼吸をした。


大丈夫、私生きている。


一息ついて、ゆっくりと周りを見渡す。


見慣れた通りになっていた。


あの角を曲がるとお気に入りのカフェがあるなんて、今考えるべきことではないけど、懐かしい風景に意識は飲み込まれて行く。


 気付くと手にスマホを持っていた。


私は画面に触れてみる。


画面が明るくなると大好きな乙女ゲームのヒロインと王子が描かれたスチル写真の待ち受けが見えた。


「ルイス様?えっえええー王子がルイス様!!!」


その瞬間、急に分かったのだった。


これは前世の記憶で、私がスマホを見ながら歩いているところにトラックが突っ込んできた。


私は逃げ遅れて轢かれて死んだ。


そしてどうやら私は乙女ゲームの中の世界の転生したらしいと。



そのあとの夢は覚えていない。



目が覚めた後、この場面は思い出せるのだけど、ゲームの細かな内容とか、私の前世の名前とかは霧がかかった様にハッキリとしない。


ただ、ルイス様がヒロインと一緒にいるスチルは目に焼き付いている。


このゲームのヒロインを大好きだったというのは待ち受けにしているくらいだから分かる。


でもそのヒロインの名前は思い出せない。


ヒロインは誰?私じゃないことは分かるんだけど・・・モヤッとする?


何故か、モヤッとする!


明日謝って昨日の失態を許してくれたらいいけどなぁ、ルイス様。


どうやって謝ろうかな、、、。


怒ってるかなぁ、、、。


悩んでも仕方ない、、、もうねよう。

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