第377庫 ギルド対抗戦(予選) その2
戦闘後。
アナウンスで流れた"弓兵族"以外――敵はいないようだった。もしくは僕が気付いていないだけで、容赦のない二人に恐れをなして逃げ出した可能性もある。
僕たちは転移した場所をキャンプ地に、周囲の様子を観察していた。
ギルド対抗戦の初日、皆がどのような動きをするのか。戦闘意欲の高い後藤さん、フレイムも珍しく同意して――現在にいたる。
先ほどの戦闘から数時間ほど経ったが、すでに何組かのギルドは脱落していた。
ギルド対抗戦は、8組になるまで無制限となっている。文字通りサバイバル、食糧や水も勝ち残るための要素の一つだ。
ゲーム時とは異なり、お菓子を食べながら、ついつい寝落ちしたりなど、そんな優しい環境ではない。
現在はパーティーを分けて、後藤さんとイリスが見張り役、順番に交代していく次第である。
火を焚き、食事を取り、身体を動かすに必要なエネルギーを摂取する。
灯りは敵に居場所を知らせる危険性もあるが、日が落ちきった今視界の確保も重要となる。後藤さんとイリスが見張り役に徹する限り、僕たちは全力で回復に務めるのがベストだろう。
心身共に――休息は必須なのである。
「ナコ、大丈夫?」
「私は特に、怪我とかはありませんよ」
「いや、そっちの方面というよりは――中々の光景だったから、違う意味で少し心配になったんだ」
「……そう、ですね」
ナコは一拍置きながら、
「慣れた、という言い方はおかしいかもしれませんが、今の私は以前のように弱くありません。大切な人が殺されるくらいなら、後藤さんやフレイムと同じことを躊躇わず実行します」
ナコはある人物に視線を移しながら、
「フレイム、あなたは人を殺す時――なにか感じたり、考えたりするのですか?」
「我に質問をしてくるか」
焚き火の向こう側、フレイムが立ち上がり、
「猫、答える前に――一つ警告してやろう。子供が我を呼び捨てるなど論外、首を跳ね飛ばされても文句は言えぬぞ」
「今、猫と言いましたよね? 私を名前で呼ばないことは、論外の範囲には入らないのですか?」
「猫を猫と言って問題があるのか?」
「もう一度言いますが、私にはナコという名前があります」
「その意見を我相手に貫きたいのならば、文字通り――物理的な意味になるぞ」
「望むところです」
互い、武器を構え合う。
一触即発、斬り合いが始まってもおかしくない雰囲気――その空気を打ち払うよう、フレイムが大きく笑い声を上げて腰を下ろした。
そして、フレイムはとんでもないことを口にする。
「ナコ、我の妃にならないか?」
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