第368庫 集結の時

「久方ぶりだな。触術師クーラよ」



「フレイム、ドルフっ?!」


 正確には――姿は異なる。

 フレイムドルフは"生変"というスキルにより、他者の肉体に魂を上書きすることが可能となっている。

 地下要塞で出会った時と、外見は変わっていない。

 黒髪に落ち着いた風貌、以前のフレイムドルフとは正反対――どうやら、肉体はそのまま維持しているようだった。

 フレイムドルフは柵に身体を預けながら、


「まさか、また出会えるとはな――存外、世界とは狭いものだ」

「君もギルド対抗戦にでるつもりだったのか」

「その予定だったのだが、お前たちの余興により――リーダー不在となってな、参加を取り消すことになった次第だ」

「クーラ、こいつがフレイムドルフとは――どういうこった?」


 後藤さんが会話に割り込む。

 最もな疑問、簡単に経緯を説明する。後藤さんは手を叩きながら笑い、あっさりと状況を受け入れた。


「面白すぎるだろ。加入させてやろうじゃねえか」

「えぇっ、ナコとイリスはどう思う?」

「私はクーラに従います」

「ナコに同じくなの」


 さて、どうするべきか。

 事情を知ってでも参加してくれるプレイヤー、そう思っていたが――現地人、フレイムドルフをギルドに加える?

 予想を遥かに超える事態となった。


「フレイムドルフ、一つだけ質問していいかな?」

「なんでも尋ねるといい」

「君の参加理由は――なんなんだ?」

「腕試しだ」


 なんとも、率直な回答だった。


「王都ギルド対抗戦、強者が集まるのは必然、我を磨き上げるに――この好機を逃す手はない。お前たちにもなにか理由があると見ている。プレイヤーとして抱える問題が存在するのではないか」


 フレイムドルフは淡々と言う。


「だが、我は――そこに関しては全く興味がない。互いギルド対抗戦に出場する目的は違えど、起こすべき行動は一緒となれば簡単な話ではないか」


 フレイムドルフは真っ直ぐに僕を見やり、


「触術師クーラ、我を――使え」


 王であった存在は、力強く――そう口にした。

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