第364庫 Aランク

 ウィンウィン、冒険所に足を運ぶ。

 後藤さんとイリスの加入手続きはもちろん、ギルド対抗戦参加に当たって大変なことを見落としていたからだ。

 現在の"Kingly"――冒険所ランクについてである。

 王都で開催されるという意味は、大陸龍に乗れるレベルのギルドのみ、Bランク以上でないと参加不可ということに他ならない。

 し、締め切りまでに間に合うのか――僕はユーリさんに相談する。


「ランクアップクエストもなにも――クーラ様のギルド、すでにAランクになっていますよ」


 ユーリさんが言う。

 一体全体、どういうことなのか――ずっとCランクだったよね。

 ユーリさん曰く、数多の功績が認められた結果という話であった。


「ひゃはは、Aランクとは――やるじゃねえか。てっきり、ランク上げから始まるかと思っていたぜ」

「いや、僕もそう思っていたんだ」


 ユーリさんがドヤ顔にて、指を左右に振りながら、


「モーフル様の救出、火の都サラマンによる侵略の阻止、一気にAランクになるには十分すぎますよーっ! 私なんて"Kingly"様の担当ということで、評価はさらに爆上がりの出世街道バリバリになってますからっ! あはぁー、他の受付嬢からの妬みの視線がまた気持ちいいんですよねーっ! 家に帰って思い出すだけで――ふふ、あははっ、お酒のツマミになっちゃうーっ!!」

「ナコ、こんな欲まみれの大人になっちゃ駄目だからね」

「勉強になります」

「イリス、こいつの存在は記憶から消していいぞ」

「忘れる努力をするの」

「うわはーっ! 相変わらず本人の前でハッキリ言いますねっ?! 私のバブリーな話はひとまず置いといて、乗龍パスポートはすでに発行済みですので――はい、お渡ししておきますね」


 仕事は速いんだよなぁ。

 しかし、エアーがある今――大陸龍に乗る機会は全くなくなった。

 まあ、持っていて損はないのでアイテムボックスに入れておこう。

 後藤さんは僕の肩を組みながら、


「クーラ、大陸龍に乗って王都に向かおうじゃねえか」

「えっ? エアーがあるのに?」

「そんなこたぁ、ここに来るまでの道中で百も承知だっつーの。だがな、他の参加ギルドは大陸龍で行くのが普通だろうがよ」

「お姉様、後藤は情報収集しようと言っているの」


 イリスが補足する。


「ギルド対抗戦に参加する大半はプレイヤーに違いねぇ。事前に掴めるものはとことん掴みに行くぞ」


 後藤さんは悪魔のよう高らかに笑い、


「俺はなぁ、知りたがりで堪らねぇ性格なんだよ」

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