第363庫 実は常識人?

「イリスのジョブは――魔法少女だ」


 後藤さんは言う。


「この世界で俗に言う現地人、もとからいるやつらは俺たちとは異なり、神殿でジョブを授かることになっているのは知っていたか?」


 なにそれぇ?

 無論、神殿という存在があること自体は知っていた。転移陣を記憶し、特定の場所から行き来することが可能となるSランクアイテムのメモリー紙、その特定の場所とは神殿に他ならないからだ。

 それ以外にも、そんな重要な秘密が隠されていたのか。


「ひゃはっ! お前、隠しごとが苦手なタイプだろ? 知らねえって顔付きがありありと見て取れるぜ。俺たちはゲーム時、キャラ作成の時点でジョブを決めただろ? その自分自身の選択が、この世界では神のお告げみたいなもんに該当する」

「自動で決定されるってことなのか」

「そういうこった。イリスを神殿に連れて行った時は、聖杯から声がして――こいつにジョブを与えやがった」

「ファンタジーっぽくていいなぁ」

「馬鹿野郎、どこら辺がいいんだ。俺が自分で決められるなら、普通にヒーラーを選んだっつうの」

「整理すると、こうなるんだね」


 現在の構成は――触術師、カード師、魔法少女×2である。

 いや、まあ、なんていうんだろう。

 どう考えても――他者が見たら本気ですか? という内容であった。

 ユニーク職オンリー、規格外にもほどがある。


「冷静に言ってやろうか? お前、この面子でギルド対抗戦にでるってのは――ネタ枠以外のなにものでもないぜ」


 後藤さんが僕の気持ちを代弁する。

 厳しいことは口にしながらも、何故か後藤さんは不敵な笑みを浮かべていた。それはまるで今の状況を心底楽しんでいるようにも見える。

 後藤さんは空となったパフェの器にスプーンを放り込みながら、


「だが、こういうのは――嫌いじゃねえ。でるからには勝つ、構成が駄目だったからなんてダセえことは弱者が言うことだ」

「後藤、行儀が悪いの」

「すまねえ、今のは俺が悪いな」


 イリスに窘められ、即座に後藤さんが謝る。

 なんやかんや、双方の些細なやり取りを見てるだけでも――息の合ったコンビだということがわかる。


「ちゃんと、ご馳走様しないと駄目なの」

「ご馳走様」


 後藤さん、絶対に――良い人である。

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