第357庫 情報整理

 魔力の核に干渉できる力。

 それだけでも最悪の脅威ながら、まだ超越者スキルが存在するという。

 周囲にいる仲間もアラシ含め、手練れを揃えているに違いない。


 ニャニャンからの情報がなければ、僕たちはベンジェと相見えた際――初手で全滅していた可能性が高いだろう。

 即死技、初見殺しの筆頭である。


「先に結論から言うとだな、ベンジェの超越者スキル――その全貌は明らかになっていないんだ。すまないが、ここからはリーダーが実際に見た内容、それに俺の推測が加わることになる」

「命懸けで掴んだ情報、どんなものであろうと助かるよ」

「最近のことだが、任務を失敗したメンバーがいたらしくてな。ベンジェがそいつを処罰したという話だった」


 ラミュアは言う。


「光の剣を胸に突き刺した」

「……光の剣?」

「そのまま体内に飲み込まれるよう光の剣は消え去ったと、処罰されたメンバーも死んではいなかったとのことだ。俺は実際に見てはいないが、なにかを刻み込まれたんじゃないかと考えている」

「……制約」


 ポツリと、ゴザルが呟く。


「ゴザルちゃん、勘が鋭いじゃないか」

「だから、ゴザルちゃんは――あぁもう、好きに呼びなさいよっ!」

「制約という言葉は正しい。呪術師の呪法と似て非なるもの、俺が立てた仮説は――こうだ」


 主による縛り。

 ラミュア曰く、強制的な命令を植え付けるのではないかとのことだった。

 この場合主はベンジェとなり、光の剣を突き刺されたものは特定の条件を課されるのだろう。

 しかし、これが事実だとしたら――あまりに強力すぎる。


「一方的な制約の刻み、極端な話ラミュアを数日以内に殺さなければ僕が死ぬ、なんて細かい条件も可能だったらどうする?」

「お手上げにもほどがあるな。呪いは基本的に自分だけに害があるが、制約というものはソラの言う通り、他者を関与させることができる」

「……その超越者スキル、本気で言ってるの? いくらなんでも、めちゃくちゃすぎるわよ」

「最初に話した通り、全貌は明らかになっていない。リーダーが掴んだ情報から、俺が仮説を立てただけだ」


 ラミュアはため息を吐きながら、


「まあ、どちらにせよ――俺たちは立ち向かう以外に道はない。このギルド対抗戦の優勝賞品は記憶しているだろう? ベンジェに王都を乗っ取られでもしたら、どんな未来が待ち受けているかは想像するに容易い」

「私たちの参加は確定なわけね」


 ゴザルがやる気満々に言う。

 未知なる脅威、どれほどの危険が待ち受けているかもわからない状況――それでもゴザルは常に前だけを見ている。


「私がいる限り、優勝は渡さないわよ」


 これほどに、頼もしい背中はなかった。

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