第358庫 参加条件

「私がいる限り、優勝は渡さないわよ」


 ゴザルの真っ直ぐな一言。

 ラミュアが称賛するよう、軽やかに口笛を吹き返す。


「さすが、ゴザルちゃん――戦闘ってなると目付きが変わるじゃないか」

「ベンジェだか便所だか知らないけど、私がぶった斬ってあげるわよ」

「……お前、本人の前では煽るようなこと言うなよ? ヘイトマックス、一番に光の剣飛んでくるぜ」


 しかし、参加するとして――1つ問題があった。


「僕とゴザル、別々の枠になるよね」

「え? どうして?」

「どうしてもくそも、ソラとはギルドが違うだろうが」

 ラミュアが呆れたように言う。

「ゴザル、諦めよう。今回ばかりはルール上仕方ないよ」

「……」


 ゴザルが無言で崩れ落ちる。

 いつも一緒にいるから、失念していたのだろう。クーラとして生きている今、僕の所属するギルドは"Kingly"となる。

 つまり、ゴザルと出場することはできない。


「やる気なくなったわ。私は不参加でお願いね」

「さっきまでの威勢はどこにいったんだよっ?! お前がでないのは困る、事の重大さ理解してるか? "Liberty"に対抗できる戦力は一つでも多い方がいいんだぞ」

「ソラがいないとか無理よ」

「依存しすぎだろっ! ソラ、なんとかしてくれっ!」


 どうしたものか。

 ゴザルが不満気な眼差しにて、僕をじぃっと見つめる。

 この後、なにを言い出すのか――なんとなく想像できた。


「……ナコちゃんとは参加できるってことよね。ズルい、ズルいズルいズルい、私もソラと一緒がよかったっ!」


 駄々をこねるよう、ゴザルが床を転がり回る。

 ゴザルは僕に気持ちを伝えてから、自身の感情を我慢することがなくなった。

 僕は今までの日々で慣れてはいるが――ラミュアは初見である。

 愕然とした様子にて、ラミュアは数歩後退しながら、


「ご、ゴザルちゃん、ゲーム時の渋いキャラ設定はどこにいったんだ? いくらなんでも変わりすぎだぜ」


 シンプルに狼狽えていた。

 それもそのはず、ラミュアは鎧装備時のゴザルが一番印象に残っているだろう。今目の前にいるのは――完全に別人である。

 ラミュアはやれやれといった仕草にて、


「まあ、あとはソラに任せるか。ゴザルちゃんのやる気、どうにかして復活させといてくれよ」

「投げっぱなしだぁ」

「俺もギルド対抗戦に参加したいところではあるが、リーダーとの今後の情報共有も考えると身バレするリスクは極力減らしておきたい。お前たちに頼りっきりになるが許してくれよ」


 両ギルドでの参加となる。

 僕とナコ、ゴザルとホムラ――なんか少なくない? 確か、ゲーム時はフルメンバーで出場していたはずだ。

 脳内の記憶がよみがえる。


「ラミュア、ギルド対抗戦って――参加人数に制限なかった?」

「ああ、ギルドから代表で3~5名までが条件としてある。戦力的には最高人数で出るのが常だろうな」

「……僕もゴザルも、今のギルドメンバー2人しかいないよね」

「参加条件すら満たしてないのかよっ?!」


 第一に、メンバー集めが必須となるのであった。

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