第354庫 誓いの先に

「忘れないうちに、約束のブツを渡しておくぞ」


 言い方ぁっ!

 僕は白雪から――ピンク色の花束受け取る。


「こんなものを欲しがるとは、妾も今の時代についてもっと勉強する必要があるな」

「いや、もう普通に順応してるよね」

「クーラ、その花束って」


 ナコが目を見開く。


「モーエン大陸にはね、環境の違いのせいか大量に生息しているんだ。今後、こっちの大陸に仕入れようと考えているよ。これで、マーケットで不足している問題は解決できると思う」

「その花なら連なりの巨塔周辺に雑草のごとく生えている。貴様、仕入れに関してもまた妾を使いっ走りにするつもりじゃないだろうな」

「今回は師匠が招待状無視して、自発的に来ただけだよね」

「えー、妾わっかんないぞー?」

「急なキャラ変で誤魔化さないでよ」


 白花串屋を後にする。

 カレアスがどうなったかは――後日、ゆっくり聞いてみるとしよう。皆、招待日をスルーしての来訪は勢いがよすぎて参る。

 だが、正直なところは――素直に嬉しかった。


 その後、マイマイに鍛錬場の修復をお願いしたり、ホムラを探したけれど見つからなかったり、もふもふ内を――ナコと二人で見回った。

 僕の理想を形にした国、種族差別は根深いもので、これから先も困難が待ち受けていることは間違いないだろう。

 それでも、スタート地点には立ったのだ。


「ナコ、もう一つだけ――一緒に行きたいところがあるんだ」

「どこまでもお供します」


 エアーに乗り込み、アクアニアスの方面に向かう。

 生い茂った木々、緑の広がる大地、転生したばかりのころに――ナコと出会った場所である。

 この世界の理不尽に、二人だけで抗い続けた日々はまだ記憶に新しい。

 目的地は――一つだった。


「クーラ、到着しました」

「ありがとう」


 ファーポッシ村、お墓の前にフラリシアの花束を供える。

 あの日、世界が変わるということは――変えることができるのだと気付いた。

 今、僕はミミさんの思い描く未来に一歩でも近付けただろうか。

 まだまだ、この歩みをとめることは――決してない。


「行こうか、ナコ」

「はい」


 信じられる仲間と共に、僕たちは前に進み続ける。




〜あとがき〜

もふもふの都開国編、お付き合いいただきありがとうございました。


今回はクーラの理想を形にするという話でしたが、次回はリボル亡き後の新たな悪との対立がメインとなっています。

新章、エレメント正邪激闘編になります。


応援、コメント、お星様☆、いつも本当にありがとうございます! コメント何度も見返しては歓喜に震えています…!!


書き貯めてからの毎日投稿をしたいと思い次回更新は6月予定です。

すでに354庫、まだ続くのか! というところですが、引き続きお付き合いいただけますと幸いです…!!

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