第351庫 もふもふ散策 その6
「おーい。風花、足りない材料持って来てやったぞ」
さらに、追加で現れる。
ゆるふわの白髪、頭に角の生えた――一見少女にしか見えない人物、その正体は何千年と生きる最強種のドラゴンである。
「師匠までいるのっ?!」
「にはは、どっきりびっくり大成功っ!」
「今度、迎えに行くって招待状――マジックレター送ったよねっ!? どっきりびっくり通り越して他人の空似かと思ったよっ!」
「落ち着け、妾ほど可愛い空似などいるわけがないだろう。貴様に迎えに来てもらわなくとも、妾が翼となって飛んで来る方が遥かに早い」
えぇ、背中に誰か乗せるの――アレだけ嫌がってたのに?
白雪も出会った当初から大分変わったなぁ。無論、悪い意味ではないのだが――驚くべきことはまだあった。
「師匠、風花さん、なんで普通に商売してるの?」
「安心しろ。貴様の国のルール通り、正式な露店の許可証は持っているぞ」
「それはありがとう。いや、そういう意味で聞いたんじゃなくて」
「クーラ殿、サンサンの唐揚げ串が爆売れなのだ。露店の売上ランキングは確認しているだろうか? 常に1位~2位を争っているのだぞ。この大陸の通貨もガッポガッポ、白雪殿と一緒にビッグな店舗でも構えようかと考えてもいる」
風花さんがドヤ顔で言う。
なんか、キャラ――変わった? 通貨がガッポガッポなんて、絶対口にする人じゃなかったよね。
白雪は揚げ立ての唐揚げ串を手に取り、
「クーラ、ナコ、妾たち自慢の唐揚げ串を食ってみろ。ここにいるということは腹が減っているのだろう」
「ドラゴンさん、ありがとうございます」
出来立て、僕とナコは早速とばかりに頬張り、
「んんー、ジュワッとしてますっ!」
「美味い、美味すぎるっ! シンプルな塩だけの味付けが――肉本来の良さを引き立てているっ! 以前サンサンで同じものを食べたことはあるけれど、これは完全に別種といっても過言じゃないっ!! 油が多いにも関わらず、二口目に重たいという感覚が全くないのも称賛の一言に尽きるっ!」
「ふっ、まだ驚くのは早い。合わせて――これも食ってみろ」
白雪がおにぎりを手渡す。
こんなの文句なし最強の組み合わせじゃないか。
しかも、この綺麗なフォルムには見覚えがある。
「ま、まさか、風花さんの手作り?」
「さすが、クーラ殿だな。数量限定ではあるが、セット販売をしている。売れ行きは絶好調なんだぞ」
「クーラ、風花が握った――風花がだぞ? 妾の言っている意味がわかるだろう」
「……なるほど、一理ある」
「し、白雪殿、それは言い過ぎだ」
風花さんが照れ笑いする。
「言い過ぎではない。貴様は美人、人間の雄共からしたら――風花が触れた、汗が混入したというだけでも付加価値となる」
「……それを殿方が喜ぶとなると、普通に怖いのだが」
一変、風花さんが真っ青になる。
萌太郎さん情報か、一方向に偏り過ぎにもほどがある。
確かに、一部の趣向をお持ちの方にはウケるかもしれない。
この点についてはノーコメント、下手に会話に参加すると手痛い目に合いそうなのでスルーする。
しかし、二人共――商魂逞しい。
「風花さん、紅桜組の仕事は大丈夫なんですか?」
「家出して来た」
「へぇー、それなら問題な――家出っ?!」
「ああ、家出だ」
問題だらけの発言が飛び出すのであった。
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