第350庫 もふもふ散策 その5
鍛錬場を後にする。
ゴザルとナコの対戦は――少なからず、なにかしらの影響を訓練生に与えただろう。
自身の成長に向けて精進するもの、明らかな力量差に現実を見るもの、どちらを選択するかは本人の意志次第となる。
願わくばこの国のため、未来のために残留を祈るのみだった。
「ナコ、本当に大丈夫?」
「あぅぅ。まだ目は回っていますけど、少し休憩したら大丈夫、れふ。お侍さんは、やっぱり強い、強きゅぅう」
ナコの頭がゆらゆらとしている。
僕は露店でドリンクを購入し――ナコに手渡す。
この近辺はもふもふを訪れる観光客を相手に、気軽に飲食ができるよう賑わいを主としたエリアである。
色々な種族が分け隔てなく楽しそうにしている。
心地よい喧騒だった。
僕はベンチに腰をかけながら――その光景を見渡す。
一ヶ月足らずで、よくここまで機能した。皆の力があったからこそ、皆が協力してくれたからこそ――実現できたことだ。
「クーラ、このジュース美味しいです」
「その様子だと、回復したかな?」
「はいっ」
ぎゅるるん、ぎゅるるぅうん。
元気な返事と共に、どこからともなく音が鳴った。なんとも可愛らしい――お腹の音である。それは僕の真横、つまりナコから響いていた。
ナコの顔が見る見る赤く染まっていく。
「……っっっ」
「あはは。動いたもんね」
「き、聞かなかったことに、してください」
「ナコは成長期なんだから、気にすることじゃないよ。せっかくだから、露店でなにか食べようか」
ここには、様々な食事が存在する。
各国のお酒を集めたように、各国の名物を取り揃えてある。
各々、好きなものをチョイスして――食べ歩くのもまた一興だろう。
なんか今日は――お肉な気分である。
肉か魚、完全にどっちかにしようって二択で悩む日あるよね。
丁度『白花串屋』という店が目に入る。
「らっしゃい、らっしゃいっ! おっと、そこのお姉さん、サンサン名物の唐揚げ串はどうだいっ?! この近辺ではない肉質、最高にジャンクな味わいだよっ!」
「……えっ? 風花さんっ?!」
「く、クーラ殿っ!?」
そこには、見知った顔の人物がいた。
まさかのまさかの遭遇に――互い、目を見開くのであった。
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