第349庫 もふもふ散策 その4

「雷の刃――雷雨っ!」

「……っ!」


 ゴザルの連撃に、ナコが防戦一方となる。

 動きを見ている限り、まだまだ――ゴザルが上なのはわかる。だが、ナコの成長もまた尋常ではない。

 ナコがハッピーに光を纏わせる。

 ナコに宿った新たな属性、白雪の修行により、今は闇と光を同時に扱うことが可能となっていた。

 ゴザルが驚愕の眼差しにて、


「これくらいじゃ終わらない。そう思ってはいたけれど、想像を遥かに超えているわ」

「ハッピー、魔装変換」


 ナコはとまらない。


『了解しまシタ』


 ハッピーが久々に喋った。

 最早、それどころではなく――ナコの言葉に応じるようハッピーが分裂した。

 二刀流スタイル、一つを二つに分けた変化により細身となってはいるが、それでも全長は変わらない。

 大剣二刀流、信じられない光景だった。


「お侍さん、勝負は――これからですっ!」


 ナコが光と共に加速する。

 速い、速い――攻守が入れ替わり、ゴザルが防戦一方となる。ゲーム時、光属性はヒーラがスキルとして備え持つ回復手段のみだった。

 今回のように、攻撃に使うというのは僕自身も初見である。

 一体、どんな能力を秘めているのか。


光斬ひかりぎりっ!」


 二刀流、光を帯びた斬撃。

 無論、ゴザルは刀で受け止めようと構えたが――寸前、驚くべき事態が起こる。

 攻撃の軌道が揺れ動き、鞭のようにしなり出したのだ。

 並の相手なら、初見殺しの一撃に――ダウンしていただろう。


「"建御雷神たけみかづちのかみ"っ!」


 だが、ゴザルは違う。

 これは王都上空で見せた強化スキル、ゴザルの全身が紫色の光に包まれて――瞬時に全力状態となった。

 二刀流の間隙を縫う、雷神の名に相応しい、神技といっても過言ではない光景だった。

 ナコの速さを――後出しで上回った。


「雷の刃――稲妻っ!」

「うきゅうっ」


 轟音、爆音。

 容赦のないゴザルのカウンター、ナコが壁を貫通して――鍛錬場の外に消えていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る