第344庫 意外な決着

 琴葉とライカ。

 三国の会合が終了後、琴葉はすぐに姿を消したので――今この瞬間、二人は初対面だったりする。

 僕にとっては兄と慕ってくれる――可愛らしい子たちだ。


「二人共、喧嘩しないでよ」

「喧嘩じゃないからぁ」

「喧嘩じゃない」


 ライカ、琴葉は言う。

 双方、睨み合い――互い手の届く距離に近付く。殴り合いとか始めないよね? 

 両者個性が強すぎるため、次の行動が全く読めない。

 琴葉は威勢よく腰に手を当てながら、


「にぃに、これはね――どっちが妹としてレベルが上なのか、退くことのできない戦いだよ。まあ、にぃにと血の繋がりのある私に軍配が上がるかな」

「琴ちんだっけ。確かに、ライカはクーにぃとは血の繋がりはないよ。でも、この世界に転生してからは――長い時間一緒にいるもん」

「……長い、時間?」

「んんー、ライカの勝ちってことだよねぇ」

「はぁ? なんでそうなるの?」

「逆になんでそうならないの?」

「な、なにこいつ? 単純で簡単な言葉だけなのに――妙な自信と説得力を感じる」


 まさかまさかの、琴葉が圧倒されている。


「どっちが妹としてレベルが上かってさぁ、小学生のライカの方が――どう考えても妹力最強だよねぇ?」


 妹力ってなに?


「きゃはは、琴ちんっていくつ? 見た目高校生くらいと思うけど、お兄ちゃんお兄ちゃんって甘えん坊する年考えなよ。ライカからしたら、大きい子供が駄々こねてるようにしか見えないからねぇ」

「わぐはぁっ」


 琴葉が血を吐きながら膝をついた。

 いや、今のどこでそんな――吐血するほどのダメージ受けたの? ゴザルと戦っていた時より重傷感あるよね。

 琴葉は震える身体を無理やり起こしながら、


「ふ、ふふ、あはは。忍者ちゃん、私そんな一言全然応えてないから」

「どう考えても大ダメージだろっ?!」

「琴ちん子鹿みたいでウケる」

「嘘、本当はめちゃくちゃ効いてる。にぃにの写真、持ち歩いてたら同級生にドン引きされたし。でも別に友達なんていらない、にぃにがいればそれでいい」


 重い、愛が重すぎる。

 今の琴葉の話を聞き、ライカも通ずるものがあったのか――うんうんと、深く頷きながら琴葉の頭をなでる。


「なに? 同情とかやめてよね」

「ライカも、もとの世界では友達一人もいなかったよ」

「マジで?」

「一緒だねぇ」

「忍者ちゃん、なんか急な親近感」


 琴葉の目が輝き始める。

 ライカの純粋な言葉、その前の率直な一言からもわかるように――同情なんて微塵もないと、琴葉もすぐに理解したのだろう。

 ライカはニコニコと愛らしい笑顔で、


「琴ねぇ」

「琴、ねぇ?」

「クーにぃの妹さんだったら、ライカにとってはお姉ちゃんだよ。これからは琴ねぇって呼んでもいい?」

「私、新しい扉開いちゃうかも」


 妹騒動は意外な形にて、決着が付くのであった。

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