第343庫 兄

「ライカの出番だぁっ!」


 ライカがやる気十分に叫ぶ。

 ここ最近、ライカは特にやることがなく遊び呆けていた。

 それも当然、まだまだ小難しいことができる年齢ではないのだ。

 まだまだ遊び盛り、遊ぶことが仕事な年ごろである。

 自由奔放なライカ、もふもふ領内を走り回っているだけでも――周囲に元気を与えてくれるだろう。

 活気づけには――持って来いであった。


「悪い王様を成敗してきたらいいんだよねぇ」

「いきなり成敗しちゃ駄目だからね。成敗するために――なにか、悪事を働いていないか情報を収集して来てほしいんだ」

「そういう系は大得意だよ。山でよくお祖父ちゃんとサバゲーしてたからねぇ」

「前から気になってたんだけど、お祖父ちゃんって何者なの?」

「んんー、最強のじじいっ! って感じかなぁ。ライカのすることは、なんでも付き合ってくれたんだよ」


 ライカが嬉しそうに話す。

 大切な家族、僕の妹も――どうしているだろう。両親を探すと言ったきり、姿を見ていなかったりする。


「じゃあ、ライカ行ってくるねぇ」

「アクアニアスまでは、ナコにエアーで運んでもらおう。それともう一つ、2人パーティーで潜入してもらう」

「えぇー、一人の方が動きやすいよぉ」

「ごめんね、万が一の際だよ。片方はライカになにかあった時のため、表側で潜伏してもらおうと思う」


 危険な任務には変わりない。

 ライカが強い、超越者といえども――備えは必要である。2人パーティーとは言ったものの、残り一人の選択が極めて難しい。

 ゴザルとホムラは表側でも問題を起こしそうだし、僕も僕で国が動き出した直後は下手に動くわけにもいかない。

 どうするべきか、熟考している最中、


「にぃに、私が行こうか?」

「いいの? 剣聖と称される君だったら安心だよ」

「にぃにのためならなんでもするよ」

「うんうん――って、琴葉っ?!」


 噂をすればなんとやら、なんてレベルじゃない。

 いつの間にか、僕の背中に妹が引っ付いていた。一ミリも気配を感じず、声をかけられるまで全く気付かなかった。一応ここもふもふのメイン機関なんだけど、警備状態とかって大丈夫?

 琴葉は僕に頬ずりしながら、


「定期的に、にぃに成分チャージしとかないとね。それで、この忍者ちゃんのお守りをすればいいの?」

「クーにぃ、誰この馴れ馴れしいやつ」

「はぁ? 忍者ちゃん、それはこっちのセリフ――私のにぃにだからさ? 気安く兄みたいな呼び方するなっつーの」


 なんか――始まっちゃった。

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