第336庫 グング・アロウ

 レーザービーム。

 まさに、その威力はそう例えても過言ではなかった。岩盤など容易く貫き、龍が天に駆け昇るかのごとく勢いである。

 地上までの道筋が――一直線に繋がった。


「……完了、今のうちに脱出する」


 崩落はまだ続いている。

 ポンズが全てを出し尽くして切り拓いてくれた道、一刻の猶予もない――僕はホムラを抱きかかえて、足元に触手を展開する。


「ポンズ、辛かったら支えるよ」

「……大丈夫、余力は残している」


 ポンズが微笑する。

 いつも無表情なので、こんな笑顔は初めて見た気がする。感慨に耽っている場合でもない、僕たちは地上までを――一気に駆け上がった。

 月の光が視界に入り、無事に脱出できたことに安堵する。


「ライカ、ポンズ、巣穴から離れよう。近くにいたら、崩落の余波に巻き込まれるかもしれない」

「クー、にぃ」


 その時、ライカが震える声で言う。

 同時、僕も異変に気付く。脱出のみに意識を集中していたから――なんて言葉はただの詭弁となるだろう。

 もっと注意していれば、未然に防げた事態だった。


「ポンちんがいない」


 巣穴は閉じかけている。

 ポンズが笑った意味を――今さら僕は理解した。ポンズは出会った時から、生に対してそこまでの執着がなかった。

 死に場所を求めている、そんな気配があったのだ。


「ライカ、ホムラを任せていいかな」

「クーにぃ、まさか」

「僕はまだ――ポンズのことをなにも知らない」


 そう、なにも知らないのだ。


「そっかぁ、ライカはとめないよ」

「ライカならそう言うと思ってた」

「クーにぃなら、絶対大丈夫だって信じてる。クーにぃは全部丸ごと、誰だって救えちゃうんだぁ。だって、ライカも救われた内の一人だからねぇ」


 ライカは無邪気に笑いながら言う。


「行ってらっしゃい」

「ああ、行って来るよ」


 崩落の渦中、僕は巣穴に――身を投じた。

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