第308庫 捕獲

「本当、初見殺しってワードは嫌いだわ」

「実際殺されとらんやんけ、これ防いだやつ初めてなんやけど。ショック大きいわぁ、なんで息してるん?」

「魔力操作で心臓の位置を動かしたのよ」

「いや、人間離れしすぎやろ」

「胸を貫かれたのは――あなたで3度目、慣れたっていうのもおかしい話よね。首と胴体を斬り離すのは正解だと思うわ。だけど、私は例えそうなったとしても目の前の敵だけは絶対に倒す」


 ゴザルが一瞬の間――目を閉じる。

 これは"瞑想"なのか? ゴザルの胸から流れ出す血が一気に止まる。なんという回復速度か、僕だけでなく――ゴザルもまた成長しているのだ。

 アラシは空に舞う右腕を残った手で回収しながら、


「あんた、名前はなんて言うんや?」

「ゴザル」

「もし、無事に生きて帰れたら――脳内に刷り込んどくわ」

「そうね。逃がすつもりは毛頭ないわよ」


 ゴザルが刀を構え直す。

 アラシはすでに満身創痍、片手でゴザルを相手にするのは不可能に近い。アラシもそれは一連のやり取りで――十二分に理解しているはずだ。

 武者と武者、圧倒的に――ゴザルが強かった。


「ポンズ、大きい口叩いた後にすまんが――援護してくれ。全てが規格外すぎる、こいつに勝てるビジョンが浮かばん」

「……アラシ、撤退しよう」


 逃げの一手。

 ポンズがゴザルとアラシの中心に――白い矢を放った。

 部屋中に煙が充満、一瞬にして視界が不十分になる。

 僕は不意打ちに備えて、マイマイとナコを側に抱き寄せた。

 周囲に糸状の触手を張り巡らせ、警戒度をマックスにする。撤退という言葉は視界が晴れるまで鵜呑みにするわけにはいかない。

 魔力の気配が――一つ消えた。

 それは誰かがこの場から消えたのか、それとも誰かが死んだのか、視界が少しずつ少しずつ――ハッキリとしていく。

 ゴザルが床ごと、肩に刀を突き刺し――ある人物を捕らえていた。


「……痛い。すごく痛い」


 狩人、ポンズだった。

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