第306庫 襲撃者 その2

 情報が古いことは死に繋がる。

 白雪の激しい修行により、僕は転生時とは比べものにならないくらいに――アップデートされている。

 あの反応、戦士は僕の触手が1本と決め付けていた。

 遭遇時、戦士がグダグダと喋っているところ――触手はすでに口から体内に侵入させていたのだ。人質の価値があるか否か様子を見ていたが、アラシとのやり取りから察するにこのギルドは仲間の繋がりが薄い。

 ナコの耳が汚れる前に――殺すが吉と判断した。


「うっわぁあ。鎧の中で肉塊になっとるやん。えっぐい死に方――まあ、ワイはこいつ嫌いやったしどうでもええけど。名前もなんやったっけ?」

「……知らない」

「ポンズ、おったんか? 寡黙すぎて忘れてたわ」

「……ごめん」

「いや、別に謝らんでもええがな」


 残るは――アラシと狩人のみとなった。

 アラシの言う通り、ポンズと呼ばれたこの狩人――寡黙なだけでなく気配を全く感じない。凍てつくような青い瞳だけを覗かせて、頭からスッポリと覆った橙黄色の装束、男性か女性かの判別すらつかなかった。

 狩人は後方からの援護に特化したジョブとなっている。

 魔力により矢を生成し、様々な特殊効果が付与された攻撃を得意としていた。それはバフからデバフ、一撃に特化したスキルも兼ね備えており、油断すれば気付かぬうちに大ダメージを負っていたなんてことも少なくない。

 PvPでは――非常に厄介なジョブであった記憶がある。


「ゴザル、狩人は僕が」

「ソラ、ナコちゃんと一緒に――マイマイさんを守っていて」


 僕の言い掛けた言葉に、ゴザルが被せてくる。

 そうか、そうだった――今パーティーを組んでいるのはゴザルなのだ。基本的に、目の前の敵は全て一人で葬り去るという一騎駆の精神である。

 アラシは心底面白そうに顔を歪めて、


「クーラの仲間はおもろいやつばっかやなぁ。ワイたちを前にして――単騎でやるっていうんか?」

「私の武者道よ」

「そうか、そうか。今日はワイの苦手な鬱陶しいピンク狐もおらんし、変に邪魔されることはないなぁ」


 アラシは言う。

 サンサンの時と同じく、飄々とした軽い態度――この男はなにを考えているのかが全く読み取れない。

 アラシが床の斬撃痕、境界線前に歩み寄り、


「ポンズ、ちょい邪魔すんなよ」

「あら、私と一騎打ちかしら」

「あんたの武者道――乗っかったる」

「ノリがいいのね」

「あっはっは。もとの世界でもよく言われとったわ」


 ゴザルとアラシ、双方――必殺の間合いに入った。

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