第296庫 熱愛報道

 翌日の王都紙。

 王都紙とはもとの世界でいうところの新聞みたいなもの、大見出しの部分には『美女二人組、屋根で熱愛』という記事が掲載されていた。金と銀の髪色、地上からの写真でかなり距離はあるが――一目瞭然、どこの誰だかすぐにわかる。

 そもそも、王都では"Nightmares"のギルド自体知名度が高い。

 ゴザルもSランクの有名人、王都内でその名を知らない人はいない。この熱愛報道は百合百合しい意味でも注目を集めただろう。

 朝方、僕は紅茶を静かに啜りながら、


「よし、ナコにバレる前に王都を出発しよう」


 固く決意する。

 当初の予定通り、国作りの第一歩――生産職プレイヤーを探しにいこう。ある程度の目星は付いているため、向かう場所は一つだった。

 全員で行くよりは、ホーム待機組も必須となる。

 ニャニャンや漆黒者から、連絡が入る可能性もあるからだ。

 僕は皆をリビングに集め、今後の計画を説明する。

 パーティー編成は、すでに決めていた。


「僕とナコとゴザル、ホムラとライカ、この組分けでいこうと思う」

「えぇー、ライカお留守番なのぉ?」


 ライカが唇を尖らせながら言う。


「留守番というよりは――待機組かな。これも大事な役割でね、ホームを守ったり連絡を受け取ったりと重大なんだよ」

「重大なんだぁっ! ライカ頑張るねぇっ!!」

「私も待機組なんだ。一回くらいナコちゃんと冒険してみたいのに」


 ぶぅぶぅと、ホムラも不満を漏らす。


「ホムラ、ごめんね。またの機会に必ず――ところで、精霊を1体貸してもらうことはできるかな?」

「……精霊を1体? あぁー、ソラちゃんすごい名案だね。スキルは創意工夫、私も早く思い付いていたらよかったかも」


 僕の考えに気付いたのか、ホムラが手を叩いて言う。


「その言い方だと、可能なんだね」

「理論上いけると思う。テストもかねて試してみよっか」


 ホムラが風龍を召喚する。

 小さな緑色のドラゴンが、僕の体内に入り込んだ。本来、精霊を1体貸すということは精霊術師にとってはかなりのパワーダウンとなる。

 だが、ホムラだけは――その限りではない。

 ホムラの持つ超越者スキル"精霊王"は、同時召喚の限界を遥かに超えてくる。最大何体まで使役することができるかは不明だが――今の一言から察するに、1体くらい貸し出してもさして問題ないのだろう。


 今回のパーティーは、自分の中ではベストと思っている。

 超越者を含む前衛のパワーバランスを平均的に振り分けた結果でもある。決して、ゴザルの機嫌を取るための構成ではない――そう、決してない。今回に限っては今から出会うであろう相手、ゴザルがいたら都合がいいという部分もあるのだ。

 ゴザルは裏事情などいざ知らず、嬉しそうに微笑みながら、


「ソラ、目的地はどこなの?」

「ああ。石の都――ストーンヴァイスだよ」

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