第297庫 石の都ストーンヴァイス その1
石の都ストーンヴァイス。
その名称に因んだ通り、数多の鉱山、鉱石の産出を主とした――イワンドゥが治める国である。
はたして、イワンドゥとは――どんな王なのか。
王都にて三国の会合が開かれた際、堅物そうでなにを考えているか不明の仏頂面のおっさんであった。何故だかわからないが、僕をひと目見て――カレアス同様、開国に即賛成してくれた人物だったりもする。
掴めない部分の多い、癖のある印象だった。
「まあ、今回謁見する機会はないから――気にする必要はないか」
入国する。
入口付近から多くの店が賑わいを見せており、大半が素材や鉱石といった生産職用のアイテムが並べられている。
その一角、ナコが興味深けに指を差し、
「クーラ、あそこのお店――角がいっぱい置いてありますよ」
「あれは――ヒュルポカス、エガールナ、ギガント、ユニコーン、どれも四つ足で体格が大きいモンスターの角だね」
「ユニコーンがいるんですかっ?! 私、絵本で見たことあります! 白い毛並みの一本角のお馬さんですよねっ!!」
ナコが興奮気味に言う。
「多分、ナコが想像するユニコーンからかけ離れているとは思うけど――機会があったら見に行ってみようか」
「かけ離れている、ですか?」
「見てのお楽しみにしよう」
そう話す僕に、ゴザルが感心した顔付きで、
「相変わらず、色々な知識を持っているのね」
「ゴザルは生産職のアイテムとか全く興味ないもんね」
「武器、防具、それ以外は眼中にないわ」
「……の」
「の?」
「ううん。なんでもないよ」
脳筋と、出かけた言葉を飲み込み――僕たちは街中を歩く。
せっかくなので、観光しようという僕の提案に――二人は嬉しそうに頷き返す。
何気に、現実として訪れるのは僕も初見だったりする。
ストーンヴァイスは鉱石の流通が多く、生産職プレイヤーにとっては聖地と言われているほど素材の売買が盛んに行われている。
鉱石で彩った装飾品も多く、もとの世界でいうアクセサリーショップに似た場所も多い。
ナコとゴザルが装飾品を手に――楽しそうにしている。
年相応の女の子らしく騒ぐ二人、普段は命を懸けた戦闘ばかりで――こういった普通の光景がなんだか愛おしく感じてくる。
見ているだけで――幸せな気分だった。
「二人共、好きなものを持ってきて」
好きなもの? と、二人が首を傾げて返す。
「僕からプレゼントするよ。価格は気にしなくていいからね」
「「!!!」」
ナコとゴザル、同時に――目がキラキラと輝き出すのであった。
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