第292庫 相談
翌日。
僕たちは連なりの巨塔を北上した山中、以前――レベル上げで白雪に散々扱かれた場所を訪れていた。
崖下には角が3本生えたイノシシ、ライカが大群に囲まれて涙目で走り回っている。
白雪曰く、昨日逃走した罰だという。
「ドラゴンさん、私も参加して来ていいですか?」
「にはは。ナコは優しいな――構わないぞ、助けに行ってやれ」
「行ってきますっ!」
崖上、僕と白雪が残される。
珍しく二人きりの状況、丁度いい機会なので――僕は今後のことについて、開国の件を白雪に話す。
白雪は呆気に取られた顔付きをしながら、
「……全く、貴様は飽きないやつだな。次は国を作るときたか」
「師匠は皆を率いている立場だよね。なにか心構えとかあるなら聞いておきたいな」
「付いて来るものが不安にならないよう、自信を持った振る舞いで先頭に立ち続けることだな。先導者の感情は――伝播する。どれだけ苦しくても、悲しくても、皆の王であるということを常々忘れるな」
「自信を持った振る舞い、か」
最強種らしい助言であった。
「ドラゴンと人の生き方は基本的には異なる。妾が貴様に言えることは――根性論に近いものだけだろう」
「十二分すぎるよ」
「サンサンのような国を目指しているのか?」
「師匠の察し通り、僕の――理想だ。ここはミミモケ族を獣人と称して、仲良く暮らしている。僕たちの大陸のように奴隷という概念がない」
「世界の常識を改変、中々に――茨の道を進むようだな」
「やり遂げてみせるよ」
「妾も力になれることがあったら――呼ぶんだな。貴様の作る国とやらは、正直この目で見てみたい気持ちがある」
「ありがとう」
その時、ライカの悲鳴が上がる。
倒しても倒してもポップするイノシシに恐怖を感じているようだった。
僕も前に同じ修行をやらされたので、どれだけ辛いものかは重々理解できる。
意外と効率的でレベルアップには持って来いなんだよなぁ。しかし、ライカは超越者なのでレベルは100を超えているはず――意味があるかは不明である。
白雪はそんな眼下の光景を見ながら爆笑している。
「師匠は優しいなぁ」
笑いながらも、万が一に備えて――臨戦状態なのがわかった。
いつでも飛び出せるよう、前傾姿勢になっている。
なんやかんやで、面倒見の良いドラゴンなのだ。
「師匠は甘々だなぁ」
「……先ほどから、ブツクサとうるさいぞ? 貴様もボサッと突っ立ってないでさっさと行って来い」
「あ、照れて」
皆まで言う前に――白雪が僕を崖下に蹴落とすのであった。
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