第249庫 特別な言葉

「何度でも言う。私、ソラが大好き」



 ゴザルの告白。

 傍目には、女の子同士会話しているだけに見えるだろう。

 今ここにいる、僕たちだけがわかる――男女のやり取り、真っ直ぐな想いの込もった言葉が全身に響いていく。

 僕の答えは――決まっていた。


「……返事は?」

「ナコにも伝えたことだけれど、僕の現状を見てわかる通り――恋愛に意識を向ける余裕なんてないんだ」

「……んっ」

「でも、いつの日か――僕が男に戻ることができた時、ゴザルの想いを真剣に考えたいと思う。それまで、返事を待ってもらうことはできるかな?」


 保留に次ぐ保留である。

 二人に対して申しわけない気持ちはあるが、今の僕にはこの言葉が精一杯だった。

 僕の返答にゴザルは特に不満気な様子もなく――くすっと笑い出した。

 ゴザルはいつも通りの雰囲気に戻り、


「もとの世界では大人気声優、超絶美少女の私に告白されても顔色一つ変えない。ソラらしいといえば――ソラらしいわね」

「自分で言うんだっ?!」

「本当のことでしょ」

「そうだね。本心から――綺麗だよ」

「……っ」

「急に照れて無言にならないでよ。ゴザルなら言われ慣れてない?」

「……大好きな人から、貰う言葉は特別なのよ」


 ゴザルは言う。


「ソラは、私に好きって言われて――嬉しかった?」

「もちろん。すごく嬉しいよ」

「ナコちゃんに背中を押された気分だわ。でも、伝えたことを――後悔はしていない。この世界では大切な人がいついなくなってもおかしくはないから」

「それについては――僕も同意だよ」


 明日は、隣にいないかもしれない。

 離れ離れを繰り返している僕たちは――尚更、その想いが強いだろう。

 だからこそ、僕も気付かないフリをするのはやめた。

 今心に持つ正直な気持ち、全て言葉にしておくことこそが――この世界で生きていくための真実にも思える。

 ゴザルは僕の肩に頭を乗せながら、


「私、いつまでも――待つから」

「ありがとう」

「そういえば、ソラの話はなんだったの?」

「……今後のことについて、かな」


 僕は計画についてゴザルに話す。


「ほ、本気で言ってるの?」

「本気も本気、超本気だよ」

「まあ、ソラなら――実現しちゃうかもしれないわね。なにがあっても私が側にいてあげるから安心しなさい」

「頼りにしているよ、ゴザル」


 静かに、時が流れていく。

 二人寄り添いながら、僕たちは――ゆっくりと、王都の景色を眺め続けるのであった。




〜あとがき〜

次回より新章、もふもふの都開国編になります。


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