第248庫 何度でも

「……ゴザル、どこにいるんだ」


 追いかけてはみたものの、速すぎて――追い付けなかった。

 ナコとライカには、倒れるホムラに付いていてほしいとお願いしてある。皆で探した方が効率はいいだろうが――この状況、僕一人で見つけるべきだと思った。

 ゴザルの向かいそうな先は――どこだろうか。


「……安らぎの満天? セイントラール王宮? ムスカルスはないよな」


 全く、想像もつかない。

 いや待て、この世界に転生してからの記憶で考えるな。

 ゲーム時、ゴザルとよく行っていた場所がある。

 僕はセイントラール王宮の方角に向かう。

 この裏手には、王都の景色が見渡せる高台があった。ゴザルとはよくここで、戦闘技術について語り合ったものだ。

 予想通り、見慣れた後ろ姿が視界に――小さく丸まって座っている。


「ゴザル」

「……なによ、ロリコン」


 僕はゴザルの隣に腰を下ろす。

 あえて、ロリコンについては――触れないでおく。ナコとライカが側にいる手前、説得力が皆無だからである。


「ここにいると思っていたよ」

「なんでもお見通しなのね」

「ゴザルのことだからね」

「だったら、私がなんで怒ったか――わかる?」

「ヤキモチかな」

「……正解、本当になんでもわかっているから悔しい」


 ゴザルが膝に顔を埋める。

 表情を隠しているのだろうが――紅潮した耳が隙間から見えている。今までの僕に対するゴザルの反応から気付いてはいた。僕は漫画やアニメの主人公のように鈍感なわけでもなく、普通の人くらいの感性は持ち合わせている。

 負けず嫌いのゴザル、続く言葉は――予想通りだった。


「私、ソラが好き」

「仲間として、かな?」


 僕はあえて――濁した返答をする。

 今はナコに触発されて――冷静ではない部分もある。このまま、ゴザルが――今の言葉をなかったことにして、いつも通りに戻るという道を増やしたのだ。

 だが、一直線なゴザルには――効果があるはずもなかった。


「有耶無耶にしないで」

「えっ?」

「ソラなら、わからないなんてはずない」


 ゴザルは強い口調で言う。

 顔をこれでもかと真っ赤に染めて――僕を、僕だけを見ていた。ナコもそうだが、僕のパーティーの女性陣はなんて勢いがいいのだろう。


「私、負けず嫌いなの」

「知っているよ」

「絶対に取られたくないものが――ある」

「うん」

「私はゲーム時からあなたを知って、この世界で現実になった今もさらにあなたを知っていって――自分の気持ちは真実だって理解したの」


 アメジスト色の瞳が、真っ直ぐに僕を捉える。


「何度でも言う。私、ソラが大好き」

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