第241庫 王都上空最終決戦 その3

 最強の武者が――見参した。

 ゴザルがナコに後ろに下がるよう指示する。敵側との立ち位置を見て――一瞬で状況を判断したのだろう。


「ナコちゃん、キャロルさん、忍者の子を援護してあげて」

「……お侍さんは?」

「私が一人で――ニャンたちを相手にするわ」

「ほ、本気ですかっ?!」

「本気も本気――超本気よ。前回とは違う、今の私は絶好調よ」


 臆することなく、ゴザルが二人に歩み寄る。

 その踏み出した一歩に、ニャニャンとホムラが――後退する。

 ゴザルのオーラに圧倒されているのがわかった。


「参ったにゃあ。最強種の上から――さらに最強が降ってくるなんて、誰が想像できるのね?」

「ニャンちゃん、構えて――来るよ」

「震え上がれ、私は全てを断ち切り終わらせる。究極降臨――"建御雷神たけみかづちのかみ"っ!」


 ゴザルが刀を天に掲げる。

 迸る雷光、全身に――稲妻が駆け走った。目が眩むほどの紫色の光、バチバチと放電している音が周囲になり響く。ゴザルの身体がオーラのようなものに包まれている。フレイムドルフの王炎に似たスキルなのか、ゴザルの魔力が艦内を埋め尽くしていく。

 その光景に――皆が、目を奪われていた。

 神話にでてくるような美しさ、一分の隙もない洗練された立ち姿からは――戦乙女を彷彿とさせる。


「なに、あのスキル――にゃっち、記憶にないのね」

「当たり前でしょう。このスキルは――転生してから習得したものよ」

「ちょっ、待ってにゃ」

「遅いっ!」


 一足飛び、ニャニャンに迫り寄る。

 ありえない速度――最早、瞬間移動に等しかった。ニャニャンは防御がまるで間に合わず、ゴザルの一撃によりふっ飛ばされる。

 そのまま、艦内の壁を貫通――泣き喚きながら落下していった。


「ぎょにゅぇえーっ!」

「ニャン、死んでも恨まないでね」

「……なにこの馬鹿げた威力、ゴザルちゃん強すぎるでしょ」

「次はホム、あなたの番よ」

「ニャンちゃんには悪いけれど、その犠牲のおかげで初動は見た。簡単にやれると思わないでね」

「あなたは強い。十分に理解しているわ」

「理解している? なにを理解しているのかな? 私、よくわかんないから――わかるように教えてよねっ!」


 ホムラの全身から白い光が噴き出す。

 超越者スキル――"精霊王"による精霊憑依が発動した。お互い、一瞬の隙が命を散らすことになるだろう。

 紫と白の光が――独楽のように弾き合う。


「ソラ、ぼさっとしないっ! あなたにはやるべきことがあるでしょうっ!」


 ゴザルが叫ぶ。

 その声に――僕以外の皆もハッとする。ゴザルの参戦により、戦局は新しいものへと生まれ変わっていく。

 形勢は――一気に読めなくなった。


「続きを始めようか、フレイムドルフ」

「これはまた――最高の乱入者が来たものだ。お前の次にデザートまで用意されているとはな」

「残念ながら、君がそれを食べることはない」

「触術師クーラ、また奇跡を起こしてみせるか?」


 戦いは――激化する。

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