第239庫 王都上空最終決戦 その1

 戦艦の中枢付近に駆け走る。

 道中、兵士に出会うこともなく目的の場所が見えてくる。

 驚くくらいに静まり返った艦内――それはまるで、僕たちを誘い込むかのようだった。

 扉を開けた先、やつは――堂々と立っていた。


「やはり、お前は来ると思っていたぞ」


 侵入者が来たにも関わらず、フレイムドルフは笑う。


「王都を攻め落とす前に丁度よかったといえる。我の障害となるものは、先に潰しておかねば――後々、どんな災難を引き起こすかわからぬからな」


 その場には、全ての脅威が集まっていた。

 ニャニャンたちがいなければという淡い期待は――全て打ち砕かれる。

 敵側は万全の状態、互い総力戦となるだろう。


「いやあ、お久しぶりなのね。皆、元気そうでなによりにゃあ。見たことない小鬼ちゃんが混じってるけど――こんな死地に来るなんて、よっぽどの命知らずかにゃあ」

「初めましてなのです。ニャニャンさん、こんな形でお会いしたくはなかったのですが、遠慮なく全力で行かせてもらうのです」

「ふぅん。にゃっちのこと知ってて――その強気は買うのね」

「ナコちゃんも、懲りずによく来たね」

「ホムラお姉ちゃん、今の私に迷いはありません。前のように――簡単に倒せるなんて思わないでくださいね」


 一触即発。

 今は仲良く近況を語る間柄でもない。戦闘開始は――なにが引き金になってもおかしくはない状況だった。

 リボルはライカを見やり、珍しく苛立った様子にて、


「ライカ、君のおかげで予定を大分狂わされたよ。役立たずの代名詞、俺の前に厚かましくまた姿を現せたものだ。今度はクーラの仲間になったか? その年齢でその尻軽さは将来性があるな」

「なにを言われてもいい。ライカは自分の意思でここにいる」


 自然、戦うべき相手と――分断されていく。


「触術師クーラ、ヒオウを殺したそうだな」

「意外だな。君であろうとも――部下の死に感情は湧くのか」

「感情? お前は面白いことを聞くのだな。強いものが勝ち、弱いものが負ける。ヒオウは弱かったというだけだ。もう我には一ミリの興味もない」

「ヒオウは最後に――君のことを愛していたと言っていた」

「我も愛していた。お前に――敗北するまではな」


 戦闘狂の王。

 最早、会話をする意味もない――この男は、そういう男なのだ。

 どこかベクトルは違えど、リボルと似ている部分を感じた。


「さて、我らには言葉を用いた会話など不要だろう」


 フレイムドルフが両手に剣を構える。

 その強大な殺気を合図に――皆が戦闘態勢を取る。

 それぞれの想いを懸けて、自身の全てを貫き通すために。

 再び、雌雄を決する時は――来た。


「行くぞっ! フレイムドルフっ!!」

「ああ、触術師クーラっ! 命と命のぶつけ合いにて――心ゆくまで存分に語り合おうではないかっ!!」


 今、最終決戦が始まる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る