第210庫 暴食
白雪との戦闘は激化。
触手二刀流のスタイルを維持しつつ、僕は全てをぶつけて立ち回る。残すところは暴食だが――はたして、どんな効果になったのか?
白雪が右手を掲げ、大きな紫色の炎が出現する。
「舞台は整えてやる。思いっ切り――喰らってみろ」
連なりの巨塔で見た、紫色の火球と同等だろう。
直撃すれば――致命傷は免れない。避けることは簡単にできるだろうが、それは白雪の気持ちを裏切ることになる。
選択肢は一つしかない。
「師匠、足りないよ」
「足りないだと?」
「優しさが透けてる。最大級の力で放ってほしい」
「にはは。本当に貴様は面白いな」
僕の言葉に頷き、白雪の魔力が爆発的に跳ね上がる。
それに合わせるよう紫色の炎は一回り、二回り、視界を埋め尽くすほどに大きく色濃くなり――その魔力量だけで卒倒してもおかしくないほどに膨れ上がる。
白雪が右手を振りかざした。
「これくらいで死ぬんじゃないぞ」
「暴食っ!」
迫りくる特大クラスの火球に喰らいつく。
触手の先端が肉食獣のよう獰猛に口を広げて――火球を丸ごと飲み込んだ。
恐るべき暴食の貪欲さ、明らかに捕食とは喰らい方のレベルが違う。
――《
「見事だ、クーラ」
白雪が拍手しながら――僕に歩み寄る。
「"絶対炎凍球"っていうのを獲得したよ」
「その名がわかったということは、無事に吸収もできたようだな。それは妾の持つスキルの内の一つ、温度を変化させた球を放つことができる。灼熱であろうが極寒であろうが自由自在というわけだ」
「す、すごいスキルだ」
「当前、何千年も生きるドラゴンのスキルだぞ。しかし、萌太郎と全く一緒だな――この暴食は本当に食欲が旺盛だ」
白雪が暴食の口周りを懐かしむようになでる。
なにかの思い出と重ね合わせているのだろう。嬉しそうな哀しそうな、どちらともいえない――そんな表情だった。
「だが、暴食はこれで完成にはならない。ある条件を満たすことにより、最大級のパフォーマンスを発揮することができる」
「……ある、条件?」
「ああ。妾を暴食で喰らえ」
白雪がとんでもないことを言い出すのであった。
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