第207庫 魔力の核

 修行完了。

 地獄の日々は終わり、白雪と最終確認に入る。


「ステータス表示」



 ネーム   Kura

 ジョブ   触術師(レベル50)

 種族    人族

 保有スキル 触手×2 暴食 触診 



「大量にモンスターを倒しただけあって、めちゃくちゃレベルが上がってる」


 加えて、スキルも進化している。

 触手の展開数は2本に、捕食が暴食へと変化していた。

 バフを得るという基本的な部分は同じようだが、間違いなく特殊な力が追加されたに違いない。

 白雪はドヤ顔で腕を組みながら、


「どうだ、妾の修行は価値があっただろう」

「ありがとう。自覚できるくらいには――強くなったよ」

「萌太郎にもステータスを見せてもらったことはあるが、触手は×10とかになっていた気がするな。スキルの数もこんなに少なくはなかった。まあ、貴様も萌太郎の足の爪先くらいまでは追い付いただろう」

「まだ足の爪先なのっ?! 萌太郎さん強すぎだってっ!!」


 白雪の記憶から推測できる。

 規格外の強さ、照らし合わせるに――触術師の超越者だろう。

 ドラゴンを制圧したと言っていたが、一体どんな超越者スキルを持っていたのか。

 ゲーム時はユニーク職、不人気ジョブであったが――萌太郎さんの話を聞くと、僕の未来も明るく見えてくる。


 今ならハッキリと言葉にできる。

 触術師は可能性の塊、僕もいずれ――萌太郎さんのように、語り継がれるくらいの強さを手に入れられるかもしれない。

 いや、手に入れてみせるんだ。


「クーラ、この触診はどんなスキルだ?」

「主に回復だね。怪我をした部分に魔力を通して――治癒する感じかな」

「妾の記憶と少し異なる部分があるな」


 白雪は目を瞑り、当時を思い出すように言う。


「この触診、回復と逆のことはできないのか?」

「逆?」

「萌太郎は状態異常を付与することもできたぞ」


 スキルの基本的な使い方は、覚えた瞬間に自然と理解できる。

 あくまで、基本的な使い方――創意工夫するには、その固定概念を飛び越える必要性がある。

 触診は回復や傀儡糸のよう、白い糸を通したものに――プラス方面で魔力を通すものとしか捉えていなかった。


「マイナス方面は考えたことなかったな」

「ライカで試してみたらどうだ」

「んんー、ライカで試すのはおかしくないかなぁっ?!」


 予想外の提案に、ライカが異議を唱える。


「この中で一番元気だろう。妾は分身体に魔力を分けたり、クーラの面倒を見たりと疲れているのだ」

「えぇー、触手をライカに刺すんだよねぇ? チクってしない? 痛くない? ライカ注射苦手だったからぁ」

「痛みとかは特にないけど」

「……クーにぃ、優しくしてね」

「さすがに、ライカで試せないって」

「ライカ、クーにぃの役に立てるなら嬉しいよ」

「いや、気持ちは嬉しいけどさ」

「雌がここまで言ってるんだぞ? 雄ならドンッと行かないか――恥をかかすな」


 その白雪の一言に、僕は違和感を覚える。


「いやいや、雄ならって――えっ? 白雪、僕が男ってわかるの?」

「貴様の『魔力の核』を見たら一目瞭然、どう見ても雄に決まっているだろう。モンスターも見た目が雌であっても、雄というパターンもあるからな」


 魔力の核は雄雌――男女で異なるという。

 僕の中身が男だという事実、ある意味魔力の核は魂みたいなものなのだろう。

 身体は女性になったけれど、転生時から意識が傾かなかった理由――なんとなく合点がいくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る